連載「変化と進化を先読みする~メディアの未来」は、加速するデジタル化、スマート化の潮流の下でメディアがどう変貌しようとしているのか見通そうとするものです。
第8回は、その変貌を最も特徴的に示すものとして、スマートデバイス、とりわけタブレット機器をターゲットにしたメディアの潮流を追っていきます。
2010年1月、アップルが発表したiPadは、マルチタッチ・ユーザー・インターフェースをひっさげ登場したスマートフォン=iPhoneに続く革命的な情報機器で、それまで存在しないにも等しかったメディア消費特化型の情報機器のジャンルを一挙に確立しました。
iPad投入後2年半が経過しましたが、Android OS版タブレット機、アマゾンによるキンドル・ファイア(Kindle Fire)、そして今後はマイクロソフトがWindows RT版タブレット機の投入と、まさにゴールドラッシュの様相が続いています。
本稿では、その機器性能ではなく、機器の特性とメディアがどのように交わって、どのような動きとなっているのかを展望していきます。
Point タブレットメディア、勝利の方程式を追う
まず、市場を確認しましょう。日本とは異なり米国ではタブレット市場はすでに過熱気味です。したがって、市場性の議論は、タブレットがPC市場を覆すのはいつかといった論点で取り交わされています。
●PCとTabletで構成される市場:その背景と展望を調査する(Agile Cat ― in the cloud)
アナリストが詳細に描いた市場データのグラフを見ると、過去あれだけ成長を謳歌してきたPCベンダー各社が停滞を見せる中、iPadだけが突出した成長と規模を示していることが一目瞭然です。
●タブレット端末および電子書籍専用端末の出荷台数推移・予測(株式会社 MM総研)
国内の状況も確認します。今年度はタブレット機器全体で400万台弱、2016年度には約800万台へと伸張が見込まれています。
次に、タブレットが出版をどう変えつつあるかです。
タブレットは本稿の主題であるデジタルメディアにベストフィットする情報機器になるものと、iPad発表当時から期待を込めて語られてきました。
●Cosmopolitan Says It Has 100,000 Paid Digital Subscriptions (Ad Age Media News)
●Apple Newsstand Drives 268% Increase in Digital Subscriptions at Conde Nast(Mashable)
上記2つの記事は、現在タブレットメディアが活況を呈している姿を伝えています。