上場企業の公募増資を巡るインサイダー取引問題が主要メディアの経済面、社会面をにぎわしている。証券取引等監視委員会は近く、情報を信託銀行に漏らした証券会社を金融商品取引法違反の疑いで行政処分するよう勧告を行う方針だ。

 ただ、紙誌面を賑わす案件だけがインサイダーなのか。日本の株式市場の深い闇の一端を覗いてみる。

証券会社のセールスマンが「消えた」

 「担当セールスマンが忽然と消えた」・・・。

 過日、私とランチを共にしたアジア系ヘッジファンドのマネジャーが唐突にこんな言葉を漏らした。

 担当セールスマンとは、ある日系大手証券の営業担当者のこと。「ウチの担当が長く、個人的にも付き合いがあったので、挨拶もなしに“一身上の都合”で辞めたのは釈然としなかった」

 セールスマンが使っていた会社支給の携帯電話は当然通じず。念のためと思い、自宅の固定電話、そして個人用の携帯にかけても一切連絡が取れない。送別会に誘うため自宅まで足を運んだところ、セールスマンは既に引っ越したあとだったという。単なる引っ越しというより、「消えたという感じだった」。

 閑話休題。

 現在、株式市場を揺らしているのは、野村証券と旧中央三井アセット信託銀行(現三井住友信託銀行)のインサイダー取引問題だ。

 証券取引等監視委員会は、信託銀行側に対して2度情報を漏らした野村の営業マンの行為を問題視。同委は近く金融庁に対して、野村に行政処分するよう勧告する方針だ。

 企業が公募増資を行うと、発行済み株式数が増える。これは1株当たりの価値が希薄化することから、株式市場では「売り」材料となる(前向きな要因と捉えられ、買い材料になることもある)。