マレーシアは「ルックイースト」の国だ。日本人にとっては心地の良い言葉である。そして、日頃、中小企業金融の分野においても、日本に学ぼうとする姿勢が世代を超えて脈々と受け継がれていることを感じる。
日本に学ぼうとするマレーシアの熱意は中小企業金融分野にも
近年、発展途上国では新たな民間中小企業セクターが台頭し、それに対応して中小企業政策が打ち出されており、日本の経験や中小企業金融モデルに学ぼうとする姿勢が見受けられる。
マレーシアは「中進国」として経済が相応の発展段階に到達しているが、中小企業政策やビジネス環境の改善に余念がない。
首都クアラルンプールには、かつて日本政策金融公庫(元 中小企業金融公庫)の唯一の海外事務所があり、従来交流が深い。日本の中小企業金融制度を学ぼうという日本視察ミッション等についても、いまだにマレーシアからの来客は多いようだ。
2010年、マレーシアで金融コンサルティングプロジェクトに従事していた際、中央銀行であるバンク・ネガラ・マレーシア(BNM)出身で、マレーシア唯一の信用保証会社である CGC Malaysia Bhd(CGC)の役員を務めている人物が私に言った。
「日本の信用保証協会の業務効率は、マレーシア信用保証会社のそれに比べ桁違いに高い。信用保証の申込受付から保証書発行までの期間も日本は短いと聞く。システムや人材育成などに何か秘密があるはずだ。日本の事例を分析して教えてほしい」
彼の頭の中には、きっと日本モデルには「秘訣」があるはずだ、という前提があった。
しかし私は、本当にそうなのだろうかという感覚を瞬時に持った。いまだにマレーシアが日本から学ぶだけなのだろうか、と。
高い国際的評価を受けるマレーシアの金融事情
マレーシアの金融アクセスの実態はどうなのか。中央銀行(BNM)の金融・企業開発局の担当者に聞いてみると、いつくかの調査結果を説明してくれた。
まず、世界銀行が毎年発行している「Doing Business 2011」の「Getting Credit(金融アクセス状況)」を見れば、マレーシアは、英国・南アフリカと並んで首位である。過去に遡ると、マレーシアは4年連続で首位となっている。BNMの担当者はそう誇らしげに説明してくれた。
ちなみに、全体183カ国中、日本は24位にランクしている。同じ24位には、ドイツ、カナダといった先進国とともに、ベトナム、ウクライナ、ナミビアなども挙がっている。
世界銀行のウェブサイトにより、この指標の評価基準を確認すると、どうも担保と破産に関する法制度がどの程度整備され、貸し出しや貸し手と借り手の権利を保護しているか、という物差しのようだ。中小企業向け貸し出しの状況を測るにあたり、不動産担保だけではなく動産担保が活用されているかどうかもポイントとなっている。
次に、中央銀行(BNM)の担当者は、World Economic Forum の「Competitiveness Reports 2011/2012」から、金融関連の評価項目の1つである「Ease of Access to Loans」をピックアップした。マレーシアは21位で、日本は9位であった。