「潜水艦」と聞いて、皆さんは何を思い浮かべるだろうか。筆者の場合は1960年代前半少年サンデーに連載された「サブマリン707」という潜水艦漫画だ。あれは子供ながら本当に興奮したものだ。若い方なら「サブマリン707」よりも「沈黙の艦隊」を挙げるだろう。

中国海軍創設60周年で国際観艦式、国産原潜も初公開

中国海軍の潜水艦〔AFPBB News

 いずれも海中の小さな艦内で冷静沈着な艦長が大活躍する海洋冒険物だが、実際の潜水艦の活動は決して華やかなものではない。

 潜水艦の最大の強みはその隠密性と静粛性だ。水上艦とは異なり、潜水艦は敵が優勢な領域でも効果的な作戦が可能なのである。

 中国のA2/AD(接近阻止/領域拒否)戦略が懸念されて久しい。日本でもようやく、人民解放軍の「空母」就航、対艦弾道ミサイル増強、殲20ステルス戦闘機開発などが日本の安全保障にとり「潜在的脅威になり得る」との認識が広まってきたことは喜ばしい。

 しかし、今筆者が何よりも気になるのは中国潜水艦部隊の増強と静粛化だ。中国が本気で日米に対しA2/AD戦を試みるなら、空母よりも潜水艦の方がはるかに有効だと思う。今回は最近公表された米国防総省報告をも念頭に、中国潜水艦の戦闘能力を占ってみたい。

脅威は空母よりも潜水艦から?

 最近は中国空母の脅威について聞かれることが多い。だが、軍事専門家でもない筆者の航空母艦「離着艦」経験はわずか2回、外務省で日米地位協定を担当していた頃の話だ。確か空母は横須賀が母港のミッドウェイ、当直士官部屋に1晩泊めてもらった記憶がある。

 航空母艦は24時間営業のデパートだ。戦闘機の離着艦訓練は一晩中続く。あまりの騒音に眠れず艦内を徘徊した。

 銀行から、理髪店、食堂、売店、郵便局、教会まで、ありとあらゆるサービスが完備していた。軍艦というより、むしろ人口4100人の小さな町だと思った。

 以上が筆者の航空母艦のイメージだ。これを念頭に中国の空母を考えてみよう。現在中国が就航を目指している「ワリヤーグ」空母の乗員は約2000人。ということは、空母ミッドウェイの約半分、現在横須賀にいるジョージ・ワシントンの3分の1の規模でしかない。

 それでも1隻に2000人もの中国人が乗り込む船を想像してほしい。人口2000人の小さな中国の村ならあらゆる不正、腐敗、賄賂、虚偽報告が蔓延するだろう。同じことが「ワリヤーグ」空母でも起こるとしたら、管理は大変だ。有事になれば戦争どころではないだろう。