上海万博での中国人客の目当てのブースは、なんといっても中国館だ。愛国心が強く、かつ愛郷心(「愛省心」と呼んだ方がいいかもしれない)が強い中国人は、自国以上に自省の展示ブースを見て、それだけで満足するケースが多いと聞く。

ネットで評判の日本館に口コミで来場者が続々

この数年、日本生まれのどら焼きを売る店が増えた

 老若男女、様々な中国人が上海万博を訪れるが、中国で1960年代後半から70年代前半まで続いた文化大革命以降に生まれた35歳以下のインターネット世代の若者は、ネットしかり最新のテクノロジーに強い興味を持っているため、中国館ほどではないにしろ日本館にも注目をしている。

 初日から日本館に多くの人が集まったことが日本のメディアなどでも報じられたが、ネットで日本館の評判が広まり、その情報に影響を受けた中国人が日本館も目当てに上海万博を目指すという、日本にとっては好ましいスパイラル現象が起きている。

 一部の反日的な中国人を意識したため、上海万博では、日本館で日本国旗を掲揚しないなどの処置を行ったとはいえ、日本に対するイメージはこの数年で随分改善されたと、中国に滞在する筆者は感じる。

 思えば、中国人的な視点では諸悪の根源だった小泉純一郎元首相が退任した後、若者は、海賊版を通してではあるが、日本の文化をすんなりと受け入れるようになった。

 漫画やゲームなどのオタク文化的なサブカルチャーはもちろんそうだが、1970~80年代に流行った日本の歌謡曲から宇多田ヒカルの曲まで様々な日本の音楽が、ラジオなどの公共放送や、デパートやスーパーや小商店などの公共の場所で流れるようになった。

日本人のほとんどいない田舎町に日本レストランが次々誕生

貴州省の省都、貴陽のショッピングセンター内にできた日本レストラン

 また日本のアパレルブランドや日本的ファッションが、デパートや小さなアパレルショップやインターネットを通して認知されてきた。

 また日本食も人気となっている。

 数万人の日本人が滞在する上海だけでなく、日本人が数人しか滞在していないという貴州省ですら日本レストランが増えている。

 つまり、日本レストランを出せば地元の中国人が食べに来て儲かるという状況が、全国的に起きているわけである。