5月22日は国連が定めた「国際生物多様性の日」ということで、日本各地でも様々な催しが行われたようだが、ここパリのスケールはちょっとすごい。23日がカトリックの祝日で、習慣的に翌日の月曜日も連休になることから、この週末を利用して大イベントが開かれた。
シャンゼリゼが一晩で緑の道に変わってしまった
それは、シャンゼリゼ通りをまるまる2日間、野原や畑、森に変えてしまうというもので、題して「Nature Capitale(ナチュール・キャピタル)」。「自然」と「首都」という単語を組み合わせたネーミングである。
前日の午後、ここを訪れた時には、世界中からやってきた観光客や車でごったがえすいつもの通りの喧騒だったのが、初日の朝にやってきてみれば、まるで魔法のように、目の前の風景が一変していた。
本当に嘘のようだが、そこには1台の車の気配もなく、緑がうっそうとしていたのである。
これは、前日の夜から一切の往来、交通を遮断し600人がかりで成し遂げた仕事のたまもので、トラック200台でもって運び込まれた樹木や、様々な植物が植えられた1メートル20センチ四方の枠8000個が整然と並べられたもの。
面積にして約3ヘクタール。凱旋門とコンコルド広場をつなぐパリの目抜き通りが、そっくりそのまま巨大なグリーンベルトになった形だ。
私は凱旋門の方から通りを下る形で見て回ったが、まず、その香りの良いのが印象的だった。パリのど真ん中にいて、深呼吸したい気持ちになるというのはいかにも妙だが、杉や松などが並んだ一帯は、ヴォージュやピレネーなどの山々を連想させるような彩り。
本来石畳であるはずの足元には、茶色に染まった木屑が敷かれ、それが土の地面を想像させる。さらに行くと、今度はいかにもフランスらしく、ブドウ畑が出現し、トマト、ズッキーニ、さやいんげん、ジャガイモなど野菜畑もある。
中でもひときわ目に鮮やかなのは菜の花。今年の春は冬の延長のような異例の低温続きだったために、例年ならば、ひと月以上前に盛りは過ぎているはずの花が、幸か不幸か、今が見頃というわけだ。
そして、ツンと鼻を突くようなにおいがすると思えば、そこには牡蠣が海岸の養殖場にあるような状態で積み上げられ、その隣りのスペースには、これもフランスの名産品である塩の山。