このところ日本国内の政治情勢に関することばかり書いていたので、通算80回という区切りの回でもあり、のんびりした内容のコラムにしたい。そう考えて、数日あれこれ悩んだ末に、「復活してもらいたいものベスト3」という題を思いついた。「ベスト3」といっても順位に意味はなく、とりあえず3つという意味に受け取っていただきたい。

【1】 NHK-BSの午前中の囲碁・将棋中継

 こう書いて、分かる人はどのくらいいるのだろうと不安になるが、怯んではいられない。

 2012年5月末現在、NHK-BSでは囲碁の本因坊戦と名人戦と棋聖戦、将棋の名人戦と棋聖戦の模様を生中継で放送している。いずれも2日制の棋戦で、放送時間は初日が午後5時から午後6時まで、2日目は午後4時から午後6時までである。決着は深夜にずれ込むこともあるため、日付の変わった0時45分から「速報!」で2日間にわたる勝負の結果と、勝敗を分けるポイントとなった場面の解説を放送している。

 かなりの時間枠が設けられているように見えるが、今年の3月末までは、午前9時からも1時間ないし30分の生中継があった。その枠が廃止されてしまったことが私には残念でならず、ぜひ次の番組改編で復活させてもらいたいと願っているのである。

 ここで私の棋力を書けるといいのだが、将棋は子どもの頃に遊びで指しただけ。囲碁に至っては、ルールこそ分かっているものの、一度も対局をしたことがない。これで将棋と囲碁についてあれこれ言うのは誠に気が引けるのだが、リフティングのできないサッカーファンはいくらでもいるわけで、強気の姿勢を崩さずに意見を述べたいと思う。

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 午前9時からの中継で私が最も好きだったのは、2日目の勝負再開前に行われる「並べ返し」だった。両対局者が盤を挟んで向かい合い、前日に打った手を一手ずつ再現していく。この時ばかりは掃除機を止めて、テレビの前に正座をして、私は画面に集中した。

 「時間になりましたので、並べ返してください」という立会人の発声を合図に、囲碁では黒石を持つ先番から順に石を置いていく。対局場には立会人や記録係も同席しているが、口を開く者はない。石が打たれる音だけが響き、その様子が碁盤の真上に設置されたカメラによって映される。並べ返しの間はその映像のみで、対局者の姿は画面に現れない。