マット安川 インテリジェンスの最前線にいた佐藤優さんが、何かを語る時に歴史を重んじる姿勢が印象的でした。例えば中国の軍事行動を分析するにも、問題視する声が10年前にアルバニアから発せられたことから調べ上げる。入院しながら70以上の連載を維持した、その気骨、精神力も圧巻です。この頼もしさ、リスナーから出馬要請が届くのも無理ない話です。

「中国の本質は帝国主義」・・・70年代に見抜いた国がある

「マット安川のずばり勝負」ゲスト:佐藤優/前田せいめい撮影佐藤 優(さとう・まさる)氏(右)
元外交官、文筆家 インテリジェンスの専門家として知られる。第38回大宅壮一ノンフィクション賞などを受賞した『自壊する帝国』の他、著書・訳書多数。(撮影・前田せいめい、以下同)

佐藤 普天間基地の問題は、中国に対する抑止力をいかに確保するかということと密接に関わります。沖縄は日本国防の要衝であり、中国は今まさにその周辺を脅かす存在だからです。

 1992年、領海法という法律で日本固有の領土である尖閣諸島を自国領としたことなどは象徴的でしょう。先だって中国艦隊が沖縄の鼻先を航行したことといい、彼らの攻撃的な意図が透けて見えます。

 中国という国の危険な本質をいち早く、1970年代に見抜いていた国が存在します。それは東欧・バルカン半島の社会主義国、アルバニアです。

 この国の独裁者、エンヴェル・ホッジャは1978年に中国と袂を分かった時「中国は共産主義を標榜しているが、本質は世界支配を企む帝国主義国家だ」と非難しました。中国が帝国主義化するということに関する限り、彼の“予言”はほとんど当たっています。

 上海万博を開催した(開催できた)ことにしても、帝国主義国家が完成段階に達した証しと言えるのです。

 もっとも米国もロシアも、そして日本も、世界の強国はみな帝国主義国としての力を持っており、ことさら他国を侵略しないまでも帝国主義的な「食うか食われるか」の関係にあるのが現実です。

 日本は少なくとも食われないようにしないといけませんが、今のままでは危ういと言わざるを得ません。