5月8日、中東カタルの衛星テレビ局、アル・ジャズィーラが北京支局の英語部門を閉鎖した。中国当局が同支局記者に対する記者証の更新を認めず、事実上「国外追放」したからだという。
さすがは中国。外国メディアに対する素早い「報復」、実に見事ではないか。
タイミングも絶妙だった。人権派弁護士・陳光誠を巡り荒れに荒れた第4回米中戦略・経済対話(S&ED)閉幕から4日。
ヒラリー・クリントン国務長官ら米国要人が去り、同弁護士の「米国留学」関連ニュースも一段落した矢先の電光石火。中国政府は本気なのだ。
今回は予定を変更し、中国で取材する外国人記者の苦難と悲哀について考えたい。(文中敬称略)
久しぶりの外国記者追放
それにしても、なぜ今、更新拒否なのか。中国が外国人記者を「追放」するのは14年ぶり。1998年に日本の有力日刊紙記者が「取材活動に違法な点があった」として国外退去通告を受けて以来、なのだそうだ。同時期、ドイツ人記者も同様の処分を受けたという。
筆者の北京在勤は2年後の2000年10月から。確かに外国人記者の「国外追放」という話は聞いたことがなかった。もっとも、今回中国外交部は記者証更新拒否の理由を明らかにしていない。既に欧米マスコミは様々な推測記事を流し始めている。
一部報道によれば、昨年11月にアル・ジャズィーラが放映したドキュメンタリー番組を中国当局が問題視したからだという。
確かに、中国の「労働改造所」や「労働教育所」を「21世紀の奴隷制度」として紹介した同番組は十分刺激的だ(御関心の向きはこちらをご覧頂きたい)。
北京の中国外国人記者クラブ(FCCC)は5月8日、「(中国当局が)外国人記者に対する検閲や脅迫の目的でジャーナリストビザ(の発給)を利用する最も極端な例だ」などと中国当局を批判する声明を出したそうだ。おぉ懐かしい、FCCCはまだ健在である。