ニッケイ新聞 2012年4月18日

 アルゼンチン政府が16日、アルゼンチンの石油企業で、現在はスペインのレプソル社の傘下にあるYPF社を実質的に国有化する旨を発表し、大きな波紋を呼んでいる。17日付伯字紙が報じている。

 クリスチーナ大統領は16日正午過ぎに演説を行い、YPF社の株の51%を国が保有するという提案を議会に出したと発表した。残りの株は、大統領とも密な関係にある同社のCEOであるセバスチャン・エスケナジ氏の一族や少数株主が所有するとされる。

 また、この発表と同時にブエノスアイレスのYPFの事務所では、政府代表がレプソル社にYPFからの撤退を要求。フリオ・デ・ヴィード開発相が同社の代表をつとめる。この発表にアルゼンチンの聴衆は歓喜し、演説中に与党の正義党の歌が鳴り響く中、クリスチーナ大統領は「これは石油に関する統治の復権だ」と語った。

 YPF社は1922年に設立された石油会社で、1993年には当時のメネム政権により国が株の20%を所有していたが、99年の同政権崩壊後にスペインのレプソル社に売却されていた。

 YPF社の奪還はキルチネル前大統領の頃から政府が求めていたことであり、特に近年のYPF社の生産の落ち込みを、クリスチーナ大統領はレプソル側の投資の不足によるものとして不満を抱いていた。

 また、国が保有した51%の内訳は26・01%が国によるもので、残り24・99%はアルゼンチンの石油製造者の間で分配される。51%の国による株の保有に関しては、伯国におけるペトロブラス社の例を参考にしたと大統領は演説で語っている。

 今回のアルゼンチン政府による株売買の直前までレプソル社は約58%の株を所有していたが、今回の買収で6%まで下げられた。

 アルゼンチン政府は国有化後のYPF社の生産目標や投資額、供給量などを国で決めたいとしているが、このアルゼンチン側の行動にスペイン政府は激怒している。

 スペインのホセ・マヌエル・ガルシア・マルガロ外相は「レプソル社だけでなくわが国に対しての攻撃的行為だ。何10年もかけて結んできたわが国とアルゼンチンの友好関係はこれで終わりだ」と語り、近いうちにスペイン側から厳しい報復が行われることを示唆した。

 YPF社はアルゼンチンでの石油業で約60%を占める大手で、同国のシェアの約10・4%を占めるペトロブラス社は第4位。

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