最近諸外国の現役軍人たちとじっくり中国軍事について意見交換する機会があった。中でも議論が集中したのは「A2/AD」「エアシーバトル」の概念だ。当然後者については中国側が強く反発している。今回はこのエアシーバトルの実像と虚像について考えたい。

エアシーバトルとは何か

韓国軍と在韓米軍が合同実弾演習、韓国・抱川

昨年の米韓合同演習〔AFPBB News

 ネットで調べたら、某有力全国紙がエアシーバトル(ASB)について次のように解説していた。ちょっと難しい言葉が並ぶかもしれないが、しばしお付き合い願いたい。

 なお、中国軍については最近JBPressに英エコノミスト誌の優れた記事が掲載された。一読をお勧めする。

【ジョイント・エア・シー・バトル】

 有事の際、米軍の介入を拒む接近拒否戦略に対抗するため、米国が構築を進めている軍事戦略空と海の兵力の一体運用を通した長距離攻撃が柱で、新型の巡航ミサイルや無人攻撃機の空母配備、無人潜水艦や新型長距離爆撃機の開発などが戦略の中心だ。空母建造や対艦弾道ミサイル開発を進める中国を事実上、対象としている。(太字は筆者)

 ほかにもいくつか解説記事はあったが、どれも似たり寄ったり。限られた字数の中でASBの本質を説明することは意外に難しい。また、揚げ足取りをするつもりはないが、ネット上の軍事オタク(?)たちもASBは意外に理解していないようだ。例えばこんな具合である。

●肝心の「エアシーバトルの戦略コンテクスト」というものがあまり解説されていない。
●つまりひゅうがや22DDHに海兵隊のハリアーとか「F-35B」が離着艦するってコトだろ?
●「エアシーバトル」とは、陸軍による陸上戦抜きで、海空軍のミサイルを連動させて敵の壊滅に当たることだ。ミサイル戦争においては、戦車はもちろん戦闘機も出る幕はない。徹頭徹尾、ミサイルの撃ち合いになるだろう。