自民党は4月25日の財務金融部会で日銀法の一部改正案を取りまとめ、今国会に提出する方向で、公明党や、すでに日銀法改正案を出しているみんなの党との連携をさぐる方針を決めた。

 民主党でも一部の議員が日銀法改正を提案し、前原誠司政務調査会長は「しかるべき時期に財務金融部門会議でも日銀法改正について議論していただきたい」と検討を指示した。

 やれやれ、またか・・・という感じである。何度つぶされても懲りないで同じような法案を出してくる政治家の頭はどうなっているのだろうか。今回は、彼らの信じている「神話」を検討してみよう。

【神話1】不況の原因はデフレである

 彼らはよく「デフレ不況」という。まるでデフレが不況の原因みたいだが、いったいどういう論理でデフレは不況を起こすのだろうか。政治家がその理由を論理的に述べたことはほとんどないが、みんなの党幹事長の江田憲司氏は、ブログでこう書いている。

 価格が下がり続けるということは、モノ、サービスよりも貨幣への選好が強い。すなわち、モノやサービスを買うのを手控えて、お金を持っていた方が良いと消費者が考えるからだ。その結果、モノの値段が下がる。これがデフレ現象だ。

 

 つまり人々が「モノやサービスを買うのを手控える」からデフレになり、不況になるという論理で、彼の頭の中ではデフレと不況は同じものらしいが、これはおかしい。

 いま10%のデフレになったとしよう。そうすると人々の所得が同じなら、10%多くの商品が買えるようになるので消費は拡大する。これを「ピグー効果」と呼ぶが、消費者にとってはデフレは望ましいのだ。

 他方、デフレで実質賃金が上がるため、労働需給が悪化し、失業率が増える可能性がある。これがデフレの弊害だが、日本の実質賃金はこの10年間で約8%下がっている。この最大の原因は非正社員が増えたためだが、結果的にはこれによって日本の失業率は5%以下と、先進国では低い水準に収まっている。

 またデフレによって債務が増える可能性もあるが、これは借り換えのとき金利を下げることができ、現実に実質金利は下がっている。したがってデフレによって不況が起こることは考えられない。