千代田区丸の内1-1-1のパレスホテル東京がいよいよ5月17日(木)にリニューアルオープンする。建物をすべて建て替え、客室数を大幅に減らして客室のスペースを広げ、最新の設備を導入した。また小さなコンファレンスさえできる本格的なクラブラウンジも設置した。

 売り物の設備はいくつもあるが、最も目を引いたのが日比谷通りを見下ろすバルコニーからの眺めではないだろうか。全客室に大型のバルコニーを取り付けるに当たっては、賛否両論があって侃々諤諤の議論の末に決断したという。

丸の内・大手町のビジネス街に近い都心でありながら、緑豊かなロケーション(写真提供:パレスホテル東京)

 南向きのバルコニーに立つと、まるで日比谷通りの上にホテルが立っているような錯覚に陥る。日比谷公園の先まで目の前の景色を遮る建物は存在しない。

 右にはお濠の水面や石垣を縁取る木々を望み、左には新丸ビルや丸ビルなど立ち並んでいる、こんな贅沢な空間を東京の中心で味わえるというのは、なんという幸せだろう。

 夕方、東京の景色を楽しみながら、ここで親しい人とお酒を片手に語り合ったら、時間を忘れてしまうのではないかと思う。

 こうしたハード面の設備だけでなく、パレスホテル東京はとりわけサービスの質にこだわったという。

 それを経験するのは開業以降になるが、外資系の高級ホテルが出揃った東京にあって、それらを上回るサービスをぜひ提供してもらいたいと思う。

 東京の新しい名所の1つに必ずなれると確信した。

 総支配人には49歳の渡部勝さんが就任した。米州や欧州の営業を担当してきた同ホテルきっての国際派である。その渡辺さんに、パレスホテル東京の戦略や魅力を聞いた。 

経営と運営が一体である強み。効率よりも上質なサービスにこだわった建替え

渡部 勝(わたなべ・まさる)氏
パレスホテル東京 取締役 総支配人。1987年4月パレスホテル入社。パレスホテルの宿泊部、販売促進部等を経て、99年に販売促進部国際マーケティングチーム配属。さまざまな部署での経験と実績を生かし、2010年より「パレスホテル東京」開業プロジェクトのホテル開業準備室副室長としてプロジェクトの総指揮を担当。2012年3月、現職に就任。(撮影:前田せいめい、以下注記がないものは同様)

川嶋 渡部さんは49歳の若さで総支配人に任命されましたが、白羽の矢が立った理由をどうお考えですか。

渡部 私が特別若いと言えるのかどうか・・・。外資系ならもっと年下の人がたくさんいますし、日本のホテルも体力的に動けることを重視して、徐々に若返ってきています。

 この仕事に若さが求められるのは、もちろん新しいトレンドに敏感でなくてはいけないということもありますが、それ以上に体力でしょう。ホテルは24時間365日営業で、いつ何が起こるか分かりませんから。

 あとは経験ですね。私は2007年にホテル改築の事業計画に携わるまで、海外営業をしていました。3人ぐらいのチームでエリアを分けて、年に90日くらいは海外を飛び回っていた。

 会社のお金で世界中のいろいろなホテルに泊まってきたんだから、良いホテルを考える役目は適任だろうと思われたんだと思います。

川嶋 今回の建て替えには、そうした海外営業のときの経験が生かされているのでしょうか。

渡部 はい。出来上がったホテルを見ると、私の希望でキャンバスに描いたことが8~9割ぐらい実現できています。