マハティール首相(当時)はルックイースト(東方政策)を唱え、日本に学べと言いましたが、いまや日本がマレーシアから学んでもいいのではないかと考えます。例えば、日本が力を入れ始めた海外からの観光客の受け入れはその1つではないでしょうか。

マレーシアを訪れた観光客は15年間で4倍近く増えた

世界各地で新年のイベント、夜空を染める花火

観光客の誘致に力を入れるマレーシア(写真はクアラルンプールのペトロナス・ツインタワーと信念を祝う花火)〔AFPBB News

 昨年の世界の国際観光の動向を見ますと、マレーシアは約2500万人で世界第7位でした。1997年には700万人足らずでしたから、この15年間で4倍近くに増えた計算になります。

 観光立国を宣言し環境を整え中東諸国からの観光客の誘致に力を入れたことが、功を奏したのだと思います。

 日本を訪れた観光客は昨年、約860万人で世界第30位でした。内訳は、アジアが合計で約650万人、そのうち中国・韓国・台湾の合計が約510万人に及びます。

 イスラム圏のマレーシア、インドネシアからは20万人を切っています。世論調査によるとマレーシアやインドネシアでは70%の人が日本が好きだと答えています。しかし、ハラル環境がないため訪日することができないのです。

 ハラルとは、イスラム教徒の教えに則った「合法的、許されたもの」という意味です。

 「ハラル環境」とは、イスラム教徒が食事のできる店があることや、お祈りをする場所が、十分に整っているかです。

 日本がこうしたハラル環境を作れば、自国をハラルのハブ(中核)にする政策を掲げるマレーシアだけでなく、インドネシアや中東などの裕福な観光客を呼び込むことができるでしょう。

 もっとも、多くの日本人の認識は、イスラム教では豚由来の食べ物やアルコールが禁止されているという程度ですが、実際にはさらに細かく定められています。

厳格なハラル環境でなくても大丈夫

 私は、日本では日本なりのやり方、つまり「ローカルハラル」でいいと思います。なぜなら厳密にやろうとすると、飲食店にアルコールも置けなくなってしまいます。

 日本の飲食店の多くは、アルコールにより利益を多く得ています。イスラム教徒の従業員を1人置いて対応させるような、ローカルハラルを適用すればいいと思います。

 焼肉やしゃぶしゃぶなども、あらかじめ準備したハラル牛肉を使い、他と混じらないようにすることで、イスラム教徒が食事を取れるだけでなく、日本人と一緒に日本の文化の1つである日本食を楽しむことができるようになると考えます。

 私が初めて来日したのは1990年、19歳のときでした。群馬大学でコンピューター工学を専攻しました。マレーシアからは私を含めて4人の留学生が、大志を抱き、素晴らしい環境で学べることを誇らしく感じていました。