北米報知 2012年3月7日号

 東日本を襲った激震からまもなく1年が経つ。当日はシアトル各所で追悼行事が予定され、あの凄まじい災害の記憶を再びともにする一日になるだろう。当地もまた地震とは無縁ではないがゆえ、人々の想いも強いものがある。

2001年2月の「ニスカリー地震」で崩れた市内パイオニアスクエアのレンガ建築など。(写真=国立公園局)

 当地で起こった地震で思い起こされるのは、2001年2月28日に発生した「ニスカリー地震」だろう。マグニチュード6・8の地震は、多くの建造物やインフラに被害を与え、シータック国際空港やオリンピアの州議会議事堂にも被害が及んだ。経済的損失は20億ドルにのぼったとされる。

 市民の体に地震の恐ろしさが植え付けられた11年前だったが、近年はこれを上回るマグニチュード9・0規模の地震が発生する可能性が大きく指摘されている。

 専門家の見方では、大地震を引き起こす断層は、北カリフォルニアからカナダのブリティッシュコロンビアの南まで600マイルにわたり伸びる「カスケード沈み込み帯」。この地震帯の地震周期は300年から500年とされ、最後の地震は1700年1月26日にマグニチュード8・7-9・2の巨大地震が発生したことが、日本に到達した津波の記録で判明している。

 2005年に地元地質学者らが出版した『みなしご元禄津波(邦題)』によると、高さ30メートル近くに達する大津波が発生したとされ、ワ州太平洋沿岸地域の多くが東日本大震災と同様の危機に直面した規模といえる。

 シアトルは内海にある関係上、直接的な津波の影響は免れるだろうと予想されている。問題は津波よりも地震の揺れで、01年当時もレンガ造りの建物が深刻なダメージを受け、地震後数時間ながらライフラインの断絶が報告されている。

大地震発生の被害予想は

 最大の焦点は大地震の発生時期だが、「明日起こるかもしれないし、100年後かもしれない」と、専門家によっても意見は分かれる。だがいずれも高い確率での発生を予想している。

 オレゴン州立大学のある教授は、カリフォルニア沿岸北部からオレゴン州南部にかけての沈み込み帯において、80パーセントの確率で50年以内に巨大地震が発生するという。

 ある地質学者は50年以内に37パーセントの確率でマグニチュード8・2以上の地震が発生すると予想。10パーセントから15パーセントの確率でカスケード沈み込み帯全体が破断することによるマグニチュード9以上の地震が発生するとした。