米アップルの依頼を受け、同社製品を製造している中国の工場を調べていた米国の労働監視団体、公正労働協会(FLA)は3月29日、同協会の基準や中国の労働法を超える違反行為が50件以上見つかったとする監査報告書を公表した。
アップル最大のサプライヤーを徹底調査
これは、中国における製造請負工場の実態を徹底的に調べるという、かつてない大規模な試み。その結果、極端な超過労働や、残業代の不払い、安全・衛生上の問題など、劣悪な労働環境が明らかになったと報告している。
調査対象となったのは、中国・富士康科技(フォックスコン)の3つの工場。同社は台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業が傘下に抱えるEMS(電子製品製造受託サービス)大手だ。
アップルの最大のサプライヤーで、アイフォーン(iPhone)やアイパッド(iPad)、アイポッド(iPod)、マック(マッキントッシュ)パソコンを組み立てている。
富士康科技の工場では、2010年から2011年にかけて若い工員の自殺が相次いだり、爆発事故で工員が死亡したりした。今年は工員が集団自殺を示唆するという騒動もあるなど、その労働環境やアップルの管理体制などを巡って米国の人権擁護団体などが抗議している。
こうした状況を受け、アップルは今年1月に公正労働協会に加盟し、同社に関わる中国企業の労働環境など監視していくと発表。2月からアップル依頼のもと同協会が調査していた。
残業代、30分未満は切り捨て
29日に公開された資料(発表文/報告書)によると、工場では繁忙期に協会基準の週60時間を超える労働があったり、1日の休みもなく7日以上連続して勤務させていた。
さらにその超過勤務分の賃金が十分に支払われていないことも分かった。富士康科技では残業代を30分刻みで記録しているため、例えば29分の場合はゼロ、58分であれば30分の残業代となっていた。