戦火の止まぬアフガニスタンで発生した米兵による住民殺害事件。犠牲者は十数人に上り、子供9人、女性3人を含むという。
報道される限り、拘束された米兵の経歴もこの10年の米国社会と対テロ戦争の現実(経済的困窮と4度の従軍)を見せつける。米国政府への衝撃もさることながら、アフガニスタン現地人にはたいへんショッキングな出来事であり、この辛い記憶は現地で長く残るだろう。
日本ではこうした衝撃的な事件がなければなかなか報道されないが、アフガニスタンにおける出兵国の戦死者は確実に増加している。
グルジアの派兵数は現在は1000人に満たないが、それでも2月21日には3人の兵士が一挙に命を落とすという事件が起こった。
グルジア軍は2009年11月に本格的に国際治安支援部隊(ISAF)参加したが、これで死者の合計は15人になった。1度の戦闘で3人もの死者は初めて、今年に入って4人のグルジア兵の命が失われたことになる。
しかし昨年12月20日には、既定の方針通り、グルジア兵のアフガニスタン増派をグルジア議会が承認した。本年内にグルジア兵の総数1685人程度、非NATO(北大西洋条約機構)加盟国で最大の派兵国になる予定である。
なぜグルジアはアフガニスタンへの派兵を強化するのか。初めにもう一度、その背景を振り返ってみたい。
戦略外交としての派兵
民族紛争を抱え、ロシアとの緊張関係が続くグルジアにとって、欧米の関心を引きつけ、あわよくばヨーロッパの「一員」となることは、少なくとも国家エリート層にとっての「悲願」である。
NATO加盟に対する国民の視線は単純ではないと考えられるが、少なくとも現在のグルジア政府指導部は、その独立国家としての存在に対する最大の安全保障あるいは政治経済的資源として、NATO加盟に熱心に取り組んでいる。
もちろん欧米諸国は、アフガニスタンへの増派問題とNATO加盟交渉を直接のバーターとはしていない。11月9日、グルジアを訪れていたミカエル・ラスムッセンNATO事務総長は、グルジア軍増派は加盟交渉とは直接は関係ないと明言している。
一方、先週やはりグルジアを訪れたギド・ヴェスターヴェレ独外相は、5月のNATOシカゴサミットで、グルジアの増派は大いに注目される旨述べている。ここでは、できればロシアは刺激したくないがグルジアの兵隊は是非活用したいという、西欧諸国の本音が露骨なほど明確である。