日本ではあまり大きく報じられていないが、最近中国と韓国の間で脱北者の取り扱いを巡る論争が加熱している。韓国側が中国による脱北者の強制送還を国際法違反として厳しく非難するのに対し、脱北者は不法入国者に過ぎないとする中国は韓国側の対中批判を無視する構えだ。

 脱北者と言えば、2002年5月に起きた瀋陽事件を思い出す。北朝鮮を脱出した一家5人が在瀋陽日本国総領事館への駆け込みに失敗し同館敷地内で中国側に身柄を拘束された、例の事件だ。

 あれから10年、中国での脱北者の取り扱いは改善しただろうか。今回は中国の北朝鮮「難民」に関する立場を検証する。(文中敬称略)

難民か密入国者か

北朝鮮、脱北者の監視を強化か

金正日総書記の死後、北朝鮮は脱北者への監視を強めている。写真は板門店〔AFPBB News

 「難民」については「人種、宗教、国籍、政治的信条などが原因で自国から迫害を受ける恐れがあるため自国外に逃れた人々」という説明が一般的だ。

 当初は政治難民が中心だったが、最近は自然災害、飢餓、伝染病などの災害難民や経済的貧困から外国へ逃れる経済難民も含めるのだという。

 中国側は脱北者を難民とは認めない。

 中国外交部は、北朝鮮住民の「違法入国の主な目的は経済的なもので、難民とする十分な根拠はない」「違法入国した北朝鮮住民の一部は繰り返し送還され、中には十数回にわたって送還された者もいる」として、密入国取り締まりの正当性を強調している。

 これに対し、韓国は強く反発している。2月27日にジュネーブで開かれた国連人権理事会・閣僚級会合で韓国代表は、「脱北者は政治的考慮ではなく、人道的考慮の対象だ、強制送還禁止の原則を順守するよう求める」と演説したらしい。

 「名指し」こそ避けているが、非難の対象が中国であることは明白だ。

 一方、北朝鮮側は「国境付近で起きる問題に当該国が自国の法や条約に基づく措置を取ることは主権国家の正当な活動で、他者がどうこう言う問題ではない」とし、中国による送還措置は当然だと主張する。