最近、私はインド人に人気があるようで、矢継ぎ早にアポイントが入ってくる。

 先日は、旧知の仲のサンジーヴ・スィンハ氏(サンアンドサンズアドバイザーズ社長)から面会したいと連絡があった。「新しく会社をつくったので業務内容を説明したい」と言う。

 サンアンドサンズアドバイザーズは、日本進出を狙うインド企業への助言やコンサルティングを行う会社である。また、彼はインド工科大学日本同窓会の代表でもある。

 以前、当社の新入社員教育の一環として、彼に「インドから見た日本」というタイトルで講義してもらったことがある。その時の話の内容は、もっぱら「あなたたちは飲んでいるか? 遊んでいるか?」というものであった。そんな彼が一体どんな会社をつくったのか。興味のあるところだ。

 アポイント当日、スィンハ氏は3名のインド人を連れて来社した。シナイ氏、チャウハン氏、チャンドラカール氏である。

 彼らはインド工科大学時代からの友人だという。彼ら全員に共通しているのは、デリバティブ取引の実務経験がありディールフローに関する知識と経験があること、金融システムの構築経験が豊富なこと、そしてバイリンガルであることなどである。

 彼らはそうした経験をベースに新会社をつくった。金融を中心としたシステム構築のためのコンサルティングや、業務分析・設計・構築・メンテナンスなどを行う会社である。

 彼らが来訪したのは、新会社の業務開始の報告に加えて、今後、取引先の紹介など協力をしてほしいという依頼であった。

日本のシステム開発は無駄だらけ

 話をしている中で、日本のシステムがいかに高額かという話になった。

 彼らは、55億円の予算を投じたが完成しなかった特許庁のシステムの話を始めた。特許出願や登録を迅速に行うためのシステムで、中国との特許競争の武器になるという点でも注目されていた。

 開発期間は5年以上で、費用も莫大である。プロジェクトの管理は、複数のシステム開発会社が分担して行った。設計担当の会社では当初は60人の設計者でスタートしたが、最後はなんと20倍の1200人にも増えていた。

 4人のインド人たちは「1200人で設計するシステムなんて聞いたことがない」と言う。「優秀なインド人エンジニアを集めれば40名で十分。すべての工程において、日本のシステム開発は30倍無駄な作業をしている」と言うのである。