世界を襲っている大不況の波は、衰える勢いを全く見せないどころか、ますます増幅しているようだ。そうした状況下で、企業は国はどんな手が打てるのか。贅肉のつき過ぎた体を引き締め筋肉質に変えること以外、妙策は見つからないのが現状なのかもしれない。
しかし、身をかがめて嵐の通り過ぎるのをじっと待つだけなら、国や企業のトップとして選ばれたリーダーである意味がない。こうした時にこそ、リーダーの資質が問われるものだ。不幸にも力のないリーダーを戴いてしまった組織は、残念ながら明日の成長は期待しない方がいい。
今の日本の総理大臣が適任者か否か。それは、ほんの少し時計の針を進めたら、多くの評論家が断じてくれるだろう。その前に米国のように「バイバイ、ジョージ」ならぬ「バイバイ、タロウ」と手を振られ見送られてしまうかもしれないが。
余談はさておき、こうした環境下だからこそ目を向けてほしい国がある。インドである。何を今更とご批判を受けるかもしれない。ごもっともな面はある。しかし、日本が真の意味で国際化し変革を果たして成長するには、この国に期待できることが山ほどあるのだ。
IT立国から製造業立国への転換
1つには、これまで欧米を向いてきたインドが、日本への期待を強めている点がある。欧米向けアウトソーシングで伸びてきたIT産業が成長の曲がり角に差しかかり、製造業へのシフトを強めつつある。そこで製造業立国の日本に目を向け始めた。
もう1点は、インフラ投資である。経済成長に伴って、遅れていた鉄道や道路、発電所などのインフラ整備が急務になっている。インド政府が最も力を入れている点で、そこにも日本の最先端の技術や資金が期待されている。
一方でインドはライフサイエンスなど世界をリードする技術や産業を持っている。こうした分野は日本の比較的弱い分野でもあり、日本とインドが協力すれば新たな発展が期待できる。これまで比較的関係が薄かったこともあり、両国間の協力でできることは多い。インドが欧米から一歩引いている今こそ、日本のチャンスと言える。
そのチャンスをどう生かすべきなのか。日本とインドの関係強化に10年以上、熱心に関わってきたサンジーヴ・スィンハさんに聞いた。スィンハさんは、米MIT(マサチューセッツ工科大学)よりも入学が難しいと言われるIIT(インド工科大学)の卒業生で、同大学の同窓生が作る世界的ネットワークの日本代表でもある。