日本は「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われた1980年代に確立された「品質立国」としての栄誉を、その後20年以上にわたり世界に対して揺るぎない地位として誇示してきた。

 世界に誇る「日本品質」は、勤勉で良心的な「日本株式会社」の社員の“職業本能”とも言うべき改善活動によって発展、維持されてきた。さらにその感性はモノづくりだけでなく、サービス業における「おもてなしの心」にも通じるものとして、あらゆる国内産業に生かされている。

 しかしながら、近年のグローバル化と新興国の攻勢の中でその足元が揺らぎ始めている。また、多くの企業組織が直面しているベテラン団塊世代の退職と、業績不振による若手社員の採用減少により、改善ノウハウの社内継承が難しくなった。

 それを象徴するかのように、1980年代後半をピークに国内における改善提案件数や改善実施企業数が激減し、もはや往時の1割にも満たない状況となってしまった。

【図1】 日本における改善活動の実態
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 戦後、日本に品質改善の必要性を説いたエドワード・デミング氏にちなんで、業務品質向上に努めた優良企業や個人・団体に贈られてきた「デミング賞」。

 しかし、本賞を主催する日本科学技術連盟への賛助企業数は1988年の約2万社をピークに減少し続け、今や700社余り。

 特にこうした活動を積極的に牽引してきた製造業の空洞化が拍車をかけており、国内における改善活動の活性化は大変困難な状況にある。

 実際に製造業の生産現場を歩くと、品質マネジメント(TQM:Total Quality Management)に対する強い危機感を覚えるのは筆者だけではないと思う。

 契約社員や請負会社に任された国内の製造現場では、責任者を務める正社員が彼らに対して“直接指導”を行うことがままならないという事情がある。

 また海外の拠点では、よほど現地語が達者でない限り、日本人責任者が現地社員にこちらの真意を伝えることは難しい。