三菱電機が防衛・宇宙開発関連の契約において防衛省に過大請求をしたという。皆さんは、この事件をどのように受け止めただろうか。

 私は日本のいわゆる防衛産業について取材をし、その問題点や課題などについて調べているが、そのきっかけは、素朴な疑問として「なぜ、防衛産業に関わる『不祥事』が途絶えることなく起こるのか」と、考えたことも理由の1つだ。

 ここ最近の間でも、三菱電機事案以外に防衛産業を巡る報道(それも「防衛産業は頑張っている」といったものではなく、ネガティブなもの)は続いているが、それに対する企業側の見解、弁明に当たるようなものは見たことがない。

 おそらく報じられれば報じられるほど、企業側は殻を閉ざしてしまっているのではないだろうか。

 こうなると、防衛産業や自衛隊の装備品についての真実の姿は伝わる術がなく、極めて一方的、一面的な報道ばかりが世に出るといった悪循環を生んでいるように見える。

過大請求につながる「原価計算方式」と「競争入札制度」

 まず、「過大請求事案」はなぜ起きるのか。

 それは、そもそも防衛省が企業に仕事を発注する際、「原価計算方式」に基づいて企業が算出した金額で契約することに端を発する。

 これは、防衛に関わる開発・製造は、一般の製品と違って経費がどれくらいかかるか分からないために取られた方法で、企業が自分たちで物件費と人件費に利益を上乗せするシステムだ。

 一見、企業に対して良心的なアイデアであるが、この内容について、かねて企業側から不満の声が出ていた。多くの関係者は「現実を踏まえていない」と口を揃える。