久しぶりにヤンゴンを訪れた。前回、外国投資環境調査のために訪れてから約5年ぶりとなる。灼熱の太陽、土の匂い、そして蒸し暑いパゴダ(仏塔)で祈る人々。こうした光景は変わらないものだ。

バガン遺跡群は、カンボジアのアンコール・ワットやインドネシアのボロブドゥールと並ぶ、世界有数の仏教遺跡(著者撮影)

 今回は、NPOメコン総合研究所(寺子屋小学校を建設・運営するNPO)の事務局長、ミャンマー経済専門家らと計3名で現地調査に乗り込んだ。

 現地ではメコン総合研究所の現地スタッフらが温かくサポートしてくれた。

 ヤンゴンでは世界中からの訪問者が急増し、宿泊したホテルも満室のようだった。相変わらず、露天市場・商店街・飲食店は活気があり、「激動の政治変革」を忘れさせる空間が広がっていた。

 今回、ヤンゴンに次ぐミャンマー第2の都市で仏教文化の中心であるマンダレーや、遺跡の街バガンなどの地方都市は訪問できなかったが、その穏やかな町並みは基本的には変わらないだろう。

ミャンマー経済はテイクオフ前

 先月、テイン・セイン大統領の恩赦により、多数の反体制派やジャーナリストが釈放されるなど、政治情勢は急変しているものの、まだまだ経済はこれからだ。ミャンマー経済はまだテイクオフしてはいない。

■ミャンマー概要

人 口 5,884万人(2009年時点)
面 積 67万6,578 km2(日本の1.8倍)
公用語 ビルマ語
首 都 ネピドー

 ミャンマーの名目GDP(2008年)は29兆チャット(実勢レート換算で約243億ドル)で、ベトナムの3分の1、タイの10分の1である。

 また、1人当たり名目GDP(2010年)も742ドルと低い水準にある。(出所:ジェトロウェブサイト、2012年2月14日更新)

 今回のヤンゴン訪問の1つの目的はミャンマーの民間企業家・起業家の経営実態を調べることであったので、1週間の出張中、地場企業やビジネス関係機関へのインタビューを行ったのだが、ミャンマー企業にとってビジネス環境は相当にタフなもの、という印象だ。

インフラ未整備の状況でも創意工夫する現地の経営者

 地場企業などへのインタビューに基づいてビジネス環境を分析するとともに、ミャンマー企業が抱える組織内部の問題点や脆弱性を探ったところ、ミャンマー企業の外部環境については、次のような成長阻害要因が確認できた。

(1)不足する電気供給量:電気が午前中にしか使用できない等、ディーゼルを燃やしてジェネレーターを使わなければならない。このコストに耐えられずに、生産停止に追い込まれている工場も多い。

(2)不透明な輸入規制:必要な設備の輸入に関して政府から許可を得ることが難しい。