前回、現在のカンボジアにおける消費生活事情と、庶民間での自発的な金銭相互扶助の仕組みが存在することをさわり部分だけお伝えした。

 今回は、庶民生活の実態をもう少し掘り下げ、その一部を支える金銭相互扶助の仕組みがいったいどういう算数で成り立っているのか、より具体的にまた定量的に踏み込んでみたい。

遊歩道の整備で戻ってきた美しい景観

サップ河沿いの遊歩道(著者撮影、以下同)

 カンボジアの首都プノンペン中心部を流れるトンレサップ河(サップ河)。クメール語(=カンボジア語)の意味するところは、トンレ(河)・サップ(大きな湖)。

 カンボジア北西部に位置する、東南アジア最大の淡水湖トンレサップと同じ名を持つこの河は、その湖を源流とし、約230キロの旅路を経てプノンペンに到達する。

 サップ河沿いには、1953年まで約70年間続いたフランスによる植民地統治の時代から引き継がれる、いわゆるフレンチコロニアル様式の面影を色濃く残すオープンテラスのカフェ、バー、レストランが数多く並ぶ。

 また河沿いの公園や遊歩道の整備がこの2~3年で急速に進んだことで、その景観が劇的に改善された。

 仏領時代は「東洋のパリ」と称されるほどの美しい景観を誇ったプノンペン。その後「暗黒の街」と言われるまで退廃するにいたった悲劇の歴史から、現在は見事に復活を遂げつつある。

早朝から夜半まで絶えることのない投網漁

 今では河沿いのリバーサイドエリアと呼ばれるあたりは、カンボジア人、在住外国人、観光客が各々のスタイルで散歩やジョギング、飲食を楽しみ、くつろぎの時を過ごすプノンペン随一の行楽スポットとなっている。

 初来訪する日本人の多くが多かれ少なかれ抱いて来る“貧困と地雷の国カンボジア”のイメージを一変させる、優雅なリバーサイドビュー。眼下に流れるサップ河に点々と浮かぶ小型ボートには、投網漁に勤しむ漁師たちの姿が日常的に見られ、その情景にさらなる趣を与えている。

 サップ河やメコン川でカンボジア人漁師たちが投網漁をする姿は、夜明け前の早朝からすっかり暗くなった夜半まで絶えることはない。

 リバーサイドでくつろぐ人々に対しては望郷感と癒やしの景観を与える漁師たちの営みも、現実的には生活の糧を得るためのリアルな戦いの現場である。