マット安川 今週のゲストは、14日に行われた台湾総統選挙の取材から帰国したばかりの、評論家・宮崎正弘さん。選挙戦の模様をリポートいただき、アジアはもちろんアメリカ、アフリカの情勢と展望についてもうかがいました。

国民党は勝利したものの票は大幅減。民進党は大躍進

「マット安川のずばり勝負」ゲスト:宮崎正弘/前田せいめい撮影宮崎 正弘(みやざき・まさひろ)氏
評論家、作家。国際政治・経済の舞台裏を解析する論評やルポルタージュを執筆。中国ウォッチャーとしての著作の他、三島由紀夫を論じた著書もある。近著に『中国が日本人の財産を奪いつくす!』(徳間書店)『自壊する中国 ネット革命の連鎖』(文芸社)『震災大不況で日本に何が起こるのか』(徳間書店)『オレ様国家 中国の常識』(新潮社)など。(撮影:前田せいめい、以下同)

宮崎 今回の台湾の総統選は予測通りの結果となりましたが、注目しなければいけないのは、馬英九(総統)さんの国民党が大きく票を減らした点です。

 前回4年前は、対立候補に221万票の大差をつけましたが、今回は民進党(民主進歩党)候補の蔡英文さんに対して79万票しか差をつけられなかった。票数で言うと、民進党の地盤である南部では民進党が圧倒的に勝ちましたが、ただ以前に比べ国民党との票差は縮まっている。

 反対に、北部の国民党の牙城と言われていた地域で、民進党が追い上げています。結果として、前回に比べ馬英九さんの支持は減ったということです。

 これは逆に言うと、民進党の大躍進ということです。総統選と同時に行われた国会議員選挙でも、国民党はかなり議席数を減らしました。こちらでも民進党は大躍進した。日本のメディアはそのへんのところをほとんど伝えていません。

争点は経済問題。中国は国民党とあうんの呼吸で陰に陽に選挙介入

 今回の選挙の争点は、経済問題だったと言っていいと思います。中国共産党の独裁とか思想的な論争などはほとんどありませんでした。

2012年台湾総統選挙、街にいた熱烈な祭英文支援者(撮影:宮崎正弘)街にいた熱烈な祭英文支援者(撮影:宮崎正弘)

 台湾が中国と結んだ自由貿易協定(ECFA)が昨年発効しました。その結果、特に魚介類と農作物に関して18品目の関税がゼロになり、台湾に変化をもたらしました。台湾は南に行くほど農業が盛んで、そういう地域は民進党の地盤です。

 ところが、魚介類や農産物の関税がゼロになったため、中国からドーっと買い付けが来た。すると農村や漁村に変化が起きるわけです。民進党はカネの面倒を見てくれない、国民党の方がいいじゃないかと。

 それで先ほどの話のように、南部の民進党の票がかなり崩れたんですね。これはもちろん国民党の選挙戦略で、大陸とあうんの呼吸でやったわけです。