3回目になる編集長対談シリーズ、今回のゲストはダイヤモンド・オンライン前編集長の麻生祐司氏。ダイヤモンド・オンラインもJBpressとウェブインフラ「isMedia(イズメディア)」を共有するメディアの1つで、昨年は月間ページビュー3000万超という過去最高記録を打ち出した。
ダイヤモンド社で雑誌とオンラインメディア両方を経験した麻生氏との対談では、紙とウェブの違いや両立への模索などについて語り合った。
雑誌は自分の意見を主張、ウェブは両論併記に
川嶋 麻生さんは僕と同じで雑誌(紙)とウェブの両方を経験されているわけですが、2つの媒体の違いをどのようにとらえていらっしゃいますか。
麻生 私はもともと通信社の出身で、それから週刊ダイヤモンドに移ったのですが、通信社と雑誌ではぜんぜん違うんですね。
昔の話なので今は分かりませんが、当時の通信社でよく言われたのは「自分の意見を前面に出すな」ということです。2通りの見方があるとしたら、両サイドの意見をなるべく等分に書けと。
通信社は情報という判断材料を提供する役割に重きを置いています。つまり、読者のための判断材料であり、記者の独自判断ではないのです。逆に雑誌では「自分の意見をとにかく前面に出せ」と言われました。自分の考えを起承転結でまとめて、どちらが正しいか答えを必ず書けと。
それを経験した後にダイヤモンド・オンラインに移ったわけですが、ウェブはまた雑誌と違い、自分の考えを出せば出すほどコンテンツ量が減る。原発問題でも、税と社会保障の一体改革でも、自分の意見だけだとコンテンツが少なくなるんです。
一方、両方の意見を入れるとコンテンツは増える。しかしそうすると、結果的に「このメディアは何を希求しているのか分からない」となってしまう難しさがあります。
川嶋 紙の場合は専門家の意見を取り入れながら、特集を数人の記者と一緒に作り上げるわけですよね。自分の思い描いた15~20ページの作品を。しかし、ウェブは外部執筆者に依頼するので、全て思い通りにするわけにはいかない。
麻生 自分色に染めるのは難しいですよね(笑)。自分の望んでいるストーリー、例えば消費税増税の特集をやるとして、雑誌だったら賛成か反対のいずれかのスタンスに立つじゃないですか。
でもウェブだと消費税増税の是非みたいになる。そのあたりをどうされているのか川嶋さんにお伺いしたい。自分とは反対の意見をどのくらい許容して載せるのか。