年末年始のページビューランキング第1位となった『村田メールと旧内務省』は、南相馬市で起きた医師と総務省官僚の対立をリポートしたもの(12月24日~1月6日の結果)。
日本全体にはびこってしまった官僚主義
総務省から出向している南相馬市の村田崇副市長が、学校給食の放射性セシウム測定の提案を再検討するよう要請した坪倉正治医師に返信したメールの内容を紹介し、官僚の論理と医師の倫理について解説している。
村田副市長から坪倉医師に宛てたメールには、次のようなくだりがある。
「言葉は良くありませんが、これでは単なる一職員による感情任せの『ちくり』としてしか扱うことが出来ません。ご自身の責任や立場を踏まえられた行動をお願いしたいと思います。」
今後、子供の内部被曝を防ぐために食品の検査体制の強化が必要とする医師の訴えに、自分の立場をわきまえろと返す態度には唖然とさせられる。この記事へのツイッターやフェイスブックのコメントにも、事の重大さよりも手続きを優先する官僚主義への失望と怒りがあふれている。
一方、医師にとって世界的な行動規範となっているジュネーブ宣言は、人命への最大限の尊重、国家に脅迫されても患者を害するなという理念を謳っている。
これは、「臨床試験についての規範を定めたヘルシンキ宣言などとともに、日本を含む多くの国で、実質的に国内法の上位規範として機能しています。官庁内での事務官の行動規範とは異なります」と、この記事の筆者、小松茂樹氏は説明している。
小松氏は続編の『村田メールと旧内務省(2)』で、フランスの政治哲学者アレクシス・ド・トクビルの著作を引用して行政的中央集権の限界と弊害を論じ、「行政的中央集権は、活力ある個人を抑圧し、国民を羊のようにしてしまう。政府がそれを羊飼いとして管理するようになる」としている。
さて、年明けの政治的争点は税と社会保障の一体改革で、野田政権は1月6日に消費税増税の素案を正式決定した。昨年末の『今週のJBpress』では、消費増税は日本経済を完全に失速させかねないとし、勇気をもって既得権益を廃し、規制緩和を進めることを避けていては新たな成長戦略は見えてこないと述べた。