謹賀新年
2012年最初となるこの原稿を盛岡行東北新幹線「やまびこ61号」の中で書いている。手元には「北満開拓地農業経営論」と題された全体で136ページほどの古い本が1冊。発行は昭和13年9月12日、発行所は当時大連にあった満州日日新聞社支店だ。今回のテーマはなぜか満州開拓団の物語である。
「開拓者たち」
新年早々のテーマが「満州開拓」である理由は極めて個人的なものだ。元旦の夜NHK・BSで「開拓者たち」という歴史ドラマが放映されたからである。
もちろん日本放送協会の宣伝をするためではない。このドラマには我が家、というより我が一族にとって特別の意味があるからなのだ。
筆者の母方の祖父は宋光彦という。ドラマをご覧になった方は覚えておられるかもしれない。主人公のヒロインが嫁ぐのは満州開拓団の宮城県出身の若い団員だが、その開拓団の団長が「宋光彦」だったのである。
手元にあるこの本は祖父が開拓団関係者のために書いた満州開拓の入門書なのだ。
昭和40年代前半、祖父は一時我が家に住んでいたことがある。残念ながら、祖父から満州時代の話を詳しく聞いた覚えはほとんどない。筆者が小学生だったからか、それとも祖父が昔の辛い話をしたくなかったからか、今となっては勝手に想像するしかない。
1つだけ確かなことは、筆者の名前「邦彦」が祖父の「光彦」の「彦」に肖(あやか)って付けられたことだ。思い返せば、大学の第2外国語として躊躇なく中国語を選択したこと、外務省でアラビア語を研修して今なお中国のことが気になって仕方がないのは、もしかしたらこの祖父のDNAも理由の1つかもしれない。
漢人か匪賊か
個人的妄想はこのくらいにして、ドラマの内容に戻ろう。宮城県出身のヒロインたちが当時開拓団のあった千振(ちふり)に到着した当日、早速合同結婚式が開かれた。
その席上、宋光彦団長が歓迎挨拶の中で現地満州の人々に対する配慮の重要性を熱く説いていたシーンを見て、正直ほっとした。