12月22日にトヨタ自動車が発表した「2012年暦年の販売、生産計画について」というプレスリリースを一見して、いささか驚いた。「ちょっと呆れた」と書いた方が、その瞬間の私の思いに近いかもしれない。

 その発表の内容は、2012年のグローバル生産、つまり世界全体での生産台数の見込み(計画)は865万台。2011年に比べて24%増。そのうち海外工場での生産が525万台で25%増、日本国内が340万台で23%増。

近年のトヨタ生産台数(万台)の推移に、今回発表された2012~13年の計画値を「乗せて」みた。2008年終盤から2009年の落ち込みは、言うまでもなくリーマン・ショック~世界バブル崩壊がもたらしたもの。2011年(確定前の値)は東日本大震災とタイ洪水の影響。それぞれ理由付けはできるが、今後の予測(計画)は世界のマーケットにおける現実の反応を考えると、いかにも楽観的である。参考までにフォルクスワーゲン・グループの生産台数もプロットしてみた。両者の世界戦略の違い、例えばトヨタの北米市場への依存度の大きさなどを考えると、2007~2008年の時点でトヨタの市場ポテンシャルは「伸びきっていた」と見ることができるのではないだろうか。
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 そして販売は「グローバル」では848万台で20%増、そのうち海外は695万台で2011年に比べて20%増、日本国内は28%も増やして153万台、という計画値を提示した。

 さらに翌2013年にはグローバル生産が898万台(2012年計画から4%増)、グローバル販売は895万台(同じく5.5%増)と、ほとんど900万台に達するところまで増やす。もう少し正確に言えば、そうなるはずだと予想しているというのである。

 もちろん2011年はまず東日本大震災があり、タイの洪水が追い打ちをかけたことで、生産を減速せざるをえなかったという事情(言い訳)があり、これが正常状態に復帰するのを前提にはじき出された数字であることは想像に難くない。

 ここで少し時間をさかのぼって数字を確かめてみると、2010年の生産台数は海外434万494台、国内328万2855台、合計762万3349台。2009年は世界合算で637万1291台だったが、この年はリーマン・ショックから続く世界バブル崩壊の真っ只中、最後の2~3カ月にその影響が襲ってきた2008年は821万818台、その前年の2007年は853万4690台まで伸びていたのだった。

 つまり生産体制が回復すれば、来年、再来年と、先進国の市場は冷え込んだままの状況がまだ続くとしても、中国が牽引する途上国市場の活況によって世界全体としての自動車(乗用車)受容はまだまだ伸びる。だから再び900万台に向かうU字回復が期待できる(はず)・・・というのが、上記のトヨタによる自分予測の数字になったと見ていい。

 そしてもちろん、世界屈指の「量」を誇る自動車メーカーとして、また傘下に抱える車体製造会社や部品サプライヤーへの発注のベースとして、生産計画は強気な方向で示しておかないと、と考えるのも分からないではない。

中国マーケットで後れを取るトヨタ

 しかし・・・である。

 私の観察と分析から見えてくる世界の自動車マーケットは、そんなに甘くない。

 まず、マーケットにおけるトヨタのプレゼンスは、つまり一般の人々の「良い製品」として認知されているかどうかからして、トヨタの人々が、そして日本の定説に縛られている人々が漠としたイメージだけで信じているほど高くはない。