年末も押し迫った12月20日、市ヶ谷の防衛省は慌しかった。それもそのはず、前日には金正日死去が報じられ、当日は陸上自衛隊の南スーダンPKO派遣の実施計画や、航空自衛隊の次期主力戦闘機が「F-35」に決定、相次いでその発表がされた1日だったからだ。
極めつけが、夕方から省内で催された長渕剛氏のミニライブ。被災地で活動する隊員を激励したとして一川保夫防衛大臣から特別感謝状を贈呈したことに伴って行われた。それはそれでいいのだが、タイミングなどいろいろな要素を勘案すると、苦笑しながら眺めていた関係者も少なくないのではないか。
そもそも防衛大臣からの感謝状贈呈式は、10月の自衛隊記念日行事の一環として、防衛基盤育成や隊員募集などに協力した功労者や団体に対し行われている。
これとは別枠で防衛省が特別感謝状を贈呈し、返礼のミニライブというのは、ニュース性はあるが、様々な事案を抱えるこの時期にパフォーマンスが過ぎると言われかねない。老婆心ながらちょっと心配になってしまった。
防衛産業は武器輸出三原則の見直しを望んでいない
折も折、普天間問題についても環境アセスの提出時期などが注視されているところである。さらに12月27日には、政府が「武器輸出三原則」緩和を決定し、藤村修官房長官の談話として発表した。今こそ国民への丁寧な説明が求められる時なのである。
国会議員の中には、武器輸出三原則と非核三原則の区別がつかない「先生」もいるという恐ろしい噂も聞いたことがある。それが永田町界隈の都市伝説に過ぎないことを祈るばかりだが、いずれにしてもその意義が伝わりきれていないことは確かであろう。政府サイドから、もっと理解を求める努力があってしかるべきではないか。
ポイントは、一体何のために緩和するのかということだ。一部に、これは防衛産業の意向を汲んだものだと言う向きもあるが、それは誤解だと言っていい。
なぜなら、武器輸出三原則はどちらかと言えば、日本の防衛産業を温存するために有効な施策である。この門戸を開くことは防衛産業界にとって歓迎されるとは言い難いのだ。このあたりは、清谷信一著『防衛破綻』(中公新書クラレ)に詳しい。