白川方明日銀総裁は2010年4月9日、官邸を訪れ、鳩山由紀夫首相との会談に臨んだ。経済・財政政策や金融政策運営に関する政府・日銀の定期協議の初会合で、政府と日銀が協調してデフレ脱却に取り組む基本姿勢を確認した。

日銀総裁「日本経済は当面停滞」 過度の利下げには警戒普天間5月決着できなければ「首相退陣を」、世論調査で5割超す

政府・日銀が協調してデフレ脱却に取り組むことを確認した〔AFPBB News

 リーマン・ショック直後の危機的状況が去っても、政府からは日銀に対し緩和圧力が続いている。2009年12月には新型オペレーションによる10兆円の追加資金供給を開始、2010年3月には供給額を20億円に倍増させ、「潤沢な資金供給」(白川総裁)をアピールしている。

 そんなに、じゃんじゃん供給を続けていては、短期金融市場は余剰資金が溢れ出してしまうのではないか──と心配になるかもしれない。しかし、実際のところ、資金余剰の度合いにさほどの変化はない。

新型オペの増加をアピール、その裏で他の資金供給を絞る

 日銀は実は新型オペを増額して「潤沢な資金供給」をアピールする裏で、それ以外のオペによる供給を絞っている。そうすることで調節手段の正常化を進めると同時に、必死になって市場機能の維持を図っているのだ。

東京・中央区にある日銀本店 上空より撮影

 日銀が新型オペを開始したのは2009年12月。週1回の実施額は8000億円で、残高は着々と積み上がり、3月上旬には当初の目標である10兆円近くに到達した。そして同月17日の金融政策決定会合で目標残高を20兆円に引き上げた。供給頻度を週2回とし、現状では、毎週の供給額は1兆6000億円となっている。

 ただ、このオペの供給期間は3カ月なので、初期に実施した分から、どんどん期落ちが始まっている。つまり、1兆6000億円を供給しても毎週3カ月前の実施分8000億円が期落ちするため、差し引き8000億円が週間の増加ペースとなる。これで計算すると、新型オペは今月末14兆円台に乗り、6月に目標の20兆円に届く見通しだ。

 一方、これ以外のオペによる資金供給は減少している。

 リーマン・ショック後の市場混乱期に異例措置として導入した「企業金融支援特別オペ」は最後の入札を3月24日に終えた。金融危機以前から実施している通常手段による供給も軒並み絞られている。その残高を検証してみよう。