JBpressとウェブインフラ「isMedia(イズメディア)」を共有するメディアの編集長との対談シリーズ。第2弾の今回は、雑誌WEDGEとウェブマガジンWEDGE Infinityの編集長を兼任する大江紀洋氏を招き、日本と日本のメディアを元気にするために何が必要かを語り合った。
「減原発」的アプローチは危険。中途半端な妥協はすべきではない
川嶋 今年は3月11日の東日本大震災、そして原子力発電所の事故、ユーロ危機、北朝鮮では金正日総書記の死去と、大変な年でしたが、振り返ってみていかがですか。
大江 うちの雑誌としてはやはり原発問題でしょうか。割と早い段階で原発推進を表明したので、読者の方からの批判も多くいただきました。
川嶋 産業界や大手のメディアは推進派が多いですよね。
大江 財界寄りだとか、いろいろなことを書かれました。
川嶋 私たちJBpressは脱原発が基本的スタンスで、逆に推進派からの厳しい批判を受けました。この問題は国を二分する大きな争点になりましたね。ところで、WEDGEはなぜ原発推進なのか教えていただけますか。
2006年よりWEDGE編集部所属。2011年7月、編集長に就任。
(対談写真撮影:前田せいめい、以下同様)
大江 脱化石のためには原発は要るだろうというのが我々の考え方です。原発が新エネルギーの妨げになっているという議論はありますが、新エネの未熟さの方が圧倒的な問題じゃないのかと。
世界全体でみれば、人口は増え続け、原子力抜きのエネルギー安全保障は考えられない。そこで日本が脱原発という選択をして本当にいいのかと。
川嶋 減原発か脱原発か、私の中では原発を徐々に減らしていくという方法はありだと思っていたんですけど、次第にそれは意味がないんじゃないかと思うようになってきました。
というのも、将来原発をやらないということであれば原発産業は成り立たなくなる。将来なくなるものに対して人間は力を入れないですよね。
それならば一気にやめちゃって新しいもの、太陽熱や風力、あるいは地熱に切り替えた方が、新しい産業が育つという意味ではいいんじゃないかと。目標が定まれば、日本人はものすごい力を発揮する。いまは新エネルギーが未熟だとしても、必ず世界一の効率化、低コスト化を実現すると思います。
大江 いまは減原発が社会的な合意点になりつつありますが、それは一番危険だと思います。40年経ったらなくなるものに誰が本気で向き合うのか。
どういう判断をしても50何基分の廃棄物はあるわけで、地層処分の考え方にもよりますが、今後数百年単位の核廃棄物ビジネスは確定しています。これは好むと好まざるとにかかわらず、やらなければいけない仕事です。
それだけ長い期間つき合っていかなければならないのに、技術者を失っていいのか。人類全体のエネルギーの確保、技術立国としての日本の立ち位置、原子力発電の将来発展性、廃棄物管理の必要性、と考えていくと、やはりやるべきだという考え方になると思います。