元旦が過ぎ、中国の旧正月が迫ろうとしていたある晩、旧友から「今すぐ会いたい」という電話をもらい、北京大学から20キロ以上離れた市内に出向いていった。時計の針は22時を回っていた。

正月からポスト鳩山の研究を始めた中国

 若干の緊張感と好奇心を抱きつつ、タクシーに乗り込んだ。渋滞はなかった。20分ほどで目的地に到着、旧友が待っていた。簡単に懐かしむ挨拶をした後、先方は本題を切り出した。

 「ポスト・ハトヤマに向けた対日対策の研究・分析に着手し始めている。中南海からの指示だ。小沢―鳩山両氏がカネ問題でこけた場合、現政権、あるいは民主党は大丈夫なのだろうか?」

 新与党の正当性がツートップによる献金問題で揺れ始めたころから、中国側が現状をどう認識しているのか、筆者自身、注目していたところだった。

 「民主党政権の対中政策は指導部としても歓迎できるものだ。政権を取る前の時点で靖国神社に参拝しない、中国の内政に干渉しないと表明してくれたことは大きい。あれでかなり計算が立った。中国としても積極的に民主党と手を結ぶための、事前準備の時間を確保できた」

 衆議院解散後(7月21日)、日本の政局に関する報道が、続々と、中国メディアの紙面を飾った。右翼紙として知られ、部数200万を超える《環球時報》紙は22日、1面トップで「国家戦略見直しを迫られる日本政界『大変革』間近、政権交代は必至」を報道。

民主党の対中政策に期待を寄せた

 「日本は『王朝交代』とも言える変化に見舞われている。衆議院解散に伴い、半世紀にわたる自民党の一党独裁体制は終焉に向かう。民主党が第1党に躍り出る可能性が高い。巨大な苦悩と困惑に悩まされる日本の歴史的変化に、世界も大いに注目している」と指摘した。

 同日、北京の都市報でリベラル紙とされる《新京報》は国際面トップに「日本2009大選」特集を組み、「日本各党の候補者は酷暑の中、街中で票取り合戦」を報道。特集は投開票当日まで40日間続いた。

 筆者は同紙が7月17日に掲載した評論『日本政坛,谁主沉浮(日本政局、沈むのは誰か)』に注目した。冒頭で「民主党が政権を取る可能性が高い。過半数は難しく、連立政権になるだろう」との予測を提起。

 民主党が政権を獲った場合の日中関係への影響では、小沢一郎の外交理念を中心に議論を展開する。