前回は急遽延期された野田佳彦首相初訪中の話を取り上げたが、似たような話は今週中国とミャンマーの間でも起きているらしい。ミャンマーと言えば、11月30日から3日間、米国のヒラリー・クリントン国務長官が、国務長官としては実に57年ぶりで訪問し、両国関係の大幅な関係改善への意欲を表明したばかりだ。

 米・ミャンマー関係はこれまで核開発や北朝鮮との協力にかかる疑惑、人権問題などをめぐりギクシャクしていた。しかし、本年3月以降は、ミャンマー新政府が政治改革を進める姿勢を示し、両国関係は急速に改善しつつある。

 そこで今回と次回は、従来中国と蜜月関係にあると言われるミャンマーから、中国という巨大な隣国を眺めてみることにしたい。(文中敬称略)

幻の温家宝首相訪問?

スー・チーさん率いる国民民主連盟の政党再登録を承認 ミャンマー

ヤンゴンの国民民主連盟(NLD)本部で演説するアウン・サン・スー・チーさん〔AFPBB News

 12月13日の外電は、温家宝首相が19~20日に開かれるGMS(Greater Mekong Subregion:拡大メコン流域)首脳会議に参加するためミャンマー訪問を計画中と報じ、中国には最近ミャンマーに急接近する米国を牽制する思惑があるようだと分析している。

 しかし、最初に報じたロイター通信の報道内容はちょっと微妙だった。

 曰く「・・・中国側の計画を知る2人の関係筋は、匿名を条件に、温首相のミャンマー訪問について確認した。ただし、本格的な二国間訪問という形を取るかどうかは確認できないとしている・・・」どうにも煮え切らない書き振りではないか。

 案の定、2日後の15日にはヤンゴン外交筋が温家宝首相訪問を否定したと伝えられた。いったいどちらが正しいのだろう。現時点では知る由もない。しかし、このような報道が流れること自体、現在の中国とミャンマーの関係が必ずしも円滑ではないことを示しているのかもしれない。

 ちなみにこのGMS首脳会議は今年で4回目、参加するのはカンボジア、中国、ラオス、ベトナム、タイ及び今回の議長国ミャンマーの6カ国とアジア開発銀行だそうだ。

 専門のホームページも開設されているが、温家宝首相を含め出席者名と肩書きについては一切記載されていない。

米中を手玉に取ろうとするミャンマー

 これまで日本でミャンマー関連の報道と言えば、民主化運動指導者アウン・サン・スー・チー氏とこれを弾圧する軍事独裁政権という構図だった。ところが、今年3月にセイン大統領が就任してからは同国の政治状況が大きく変わり始めている。

 中でも注目されたのが、スー・チー氏を含む政治犯の釈放、対メディア規制の緩和など、一連の民主改革措置の導入だ。これを米国が高く評価したため、先般のクリントン国務長官訪問が実現したということらしい。