ジュネーブ中央駅から徒歩数分の体育館に、毎週1回、10数人の男女が集う。裸足になり、手には和太鼓のバチを手にしている。4台の太鼓を囲んで、打ちの練習に余念がない。そこに、ひときわ背の高いレミ・クレメンテがいた。和太鼓の教師として、そして演奏家として活躍している男性だ(文中敬称略)。

50人以上に和太鼓を教え、演奏もこなす日々

ジュネーブで和太鼓の演奏を続け、指導にも励むRémi Clementeさん(写真提供 Rémi Clemente)

 レミは皆の様子を見ながら、姿勢や打ち方を教える。「こうやって叩くのだ」。レミが勢いよくバチを太鼓に叩きつけると、音の深みがまるで違う。心の芯に届いたかのような響きだ。

 レミは、ジュネーブ市と近郊に現在4つの和太鼓教室を持つ。始めて1か月というビキナーから4年近くという経験者まで、総勢50人がレミの下で太鼓を学んでいる。

 加えて、子供教室(6歳以上)もある。1回の練習は1時間45分(子供教室は1時間)。走ることから始め、打ちの基本練習、そして曲の練習と続く。

 レミの生活は、家庭で夫・父親として過ごすほかは、和太鼓一色だ。平日週4日は教えて、残りの1日はジュネーブ市の各小学校を回って、和太鼓を披露している。

 ジュネーブ市が企画した、学校で様々な国の文化を紹介するプロジェクトに参加しているのだ。 

 そして、週末は和太鼓教室の生徒数人と一緒に、お祭りや音楽イベント、日本関連の催しで演奏している。「礼実太鼓(れみたいこ)」がレミのグループ名だ。持ち曲は15曲で、徐々に増やしている。

 和太鼓の活動は、友達を集めて、公園で練習することから始まった。参加者が増え続けて教室を開くことになり、「礼実太鼓」の活動も少しずつ始めると口コミであっという間に広がった。迫力があって絵になる「礼実太鼓」はあちこちから声がかかり、毎月のように演奏依頼が入っている。

 鼓童、YAMATO、TAOといった著名な和太鼓グループは、欧州でも継続的に演奏活動をしていて、エンターテイメントとしての和太鼓はスイスでも馴染みがある。