防衛省の田中聡・前沖縄防衛局長の失言問題で、参議院の自民・公明両党は一川保夫防衛相の問責決議案を提出することを決めた。他の野党も同調する見通しなので、参議院では可決されるだろうが、野田佳彦首相も一川氏も辞任を否定しているので、政局に発展する可能性は低い。

 そもそも今回の失言問題の経緯は奇妙だった。発端は、田中氏がオフレコの「記者懇」で、辺野古の環境影響評価書の年内提出について「これから犯しますよと言いますか」と述べたとする琉球新報の記事だった。

記者クラブの談合が破綻した沖縄防衛局長の失言問題

 オフレコというのは「記録に残さない」という意味だから、メモも取らないのが普通である。そこで聞いた話は直接引用しないで「政府筋は・・・」などの間接的な形で書くのが普通だ。今回の記事は、公然たるルール違反である。

 通常は、こういう記事は徹底して否定すれば終わりである。証拠もないのだから、訴訟で争えば琉球新報は負けるだろう。

 ところが田中氏は「記憶にないがそう受け取られてもしょうがない」という曖昧な表現で認めてしまった。これは記者懇の罠である。

 オフレコ取材は他の国にもあるが、クラブの加盟社だけを集めた記者懇などというものは日本にしかない。オフレコが成り立つのは第三者が聞いていないからだが、記者懇では今回の場合10社ぐらい同席していたので否定できない。他の社が「私も聞いた」と証言したら逃げられないからだ。

 つまり記者懇ではオフレコは成り立たないのである。それが成り立つように見えるのは、記者クラブが談合して情報統制をやっているからだが、その談合が破れるとペナルティーは何もない。