中国の景気が減速している。第4四半期の成長率は8%を割る可能性が出てきた。その原因は、欧米諸国の信用危機による外需の低迷に加え、住宅バブルの過熱を防ぐ引き締め政策によって、中小企業を中心に深刻な資金難に見舞われたことがある。

 しかし、ここで少々金融緩和の方向へ方針転換しても、資金が中小企業に流れる保証はない。逆に住宅バブルはさらに膨張する可能性が高い。

 そのため、中国の政策当局はまったく身動きが取れなくなっている。

 次期首相と有望視されている李克強副首相は、住宅バブルのコントロール政策を今後も続けると、繰り返して強調している。住宅バブルのコントロールは確かに大切だが、景気減速が長期化することは決して容認できることではない。

 なぜならば、景気減速が長期化すれば、雇用情勢が難しくなり、深刻な社会問題に発展する恐れがあるからだ。

政権交代を控える中国社会の政治リスク

 8年間続いた胡錦濤・温家宝政権はあと1年ぐらいで交代することとなっている。厳しい雇用情勢と社会の不安定化は、共産党への求心力を弱めることになる。

 特に政権交代の時期には、それが深刻な政治リスクに発展する恐れがある。スムーズな政権交代を実現するには、減速感が強まる景気を下支えしなければならないのだ。

 ただし、有効な処方箋は見つからない。中国経済のファンダメンタルズからすれば、ここで金融緩和を実施すれば、景気は一気に良くなるはずだ。だが、一時的な好景気を作っても、さらに膨張したバブルが崩壊した時に中国経済がハードランディングして、さらなる景気後退がもたらされることになる。

 まったく身動きが取れない状況下で、主要都市の政府は景気が悪くないと「粉飾」するために様々な手を打っている。

 例えば、その傘下にある国有企業に対して、従業員のボーナスを前倒しして支給するように求めている。こうした措置により、統計上は「所得」の伸びが大きくなるように見える。

 もちろん、こうした措置は実際の景気を改善することにはならない。それよりも、景気減速に対して打つ手がないことが露呈し、市場では景気悪化に対する観測がいっそう強まる恐れがある。そういった意味ではまさに愚策と言わざるを得ない。