今年11月の米国の新車販売は前年同月比36.7%減を記録し、26年ぶりの超低水準に落ち込んだ。金融危機下、世界最大の自動車市場は壊滅的な様相を呈する。連邦政府・議会が「つなぎ融資」を決断したとしても、ビッグ3は破綻懸念を払拭できない。

 一方、日本の自動車輸出にも急ブレーキが掛かり、財務省の10月貿易統計では前年同月比で対米が28.3%減、対欧州連合(EU)は27.6%減とそれぞれ大幅減を記録した。米欧の金融バブル崩壊は自動車需要を直撃したが、日本の自動車輸出全体は同15.0%減に踏みとどまった。このため、霞が関には「成長の原動力である日本の自動車産業には底力がある。モノづくりの国のままで良かったなあ・・・」という楽観論が漂う。

 しかし、事態はそんな単純なものではない。

 自動車が売れないのは日本も同じ。日本自動車販売協会連合会が発表した11月の新車販売は前年同月比27.3%減となり、11月としては過去最大の落ち込み。ブランド別の対前年同月減少率は三菱(31.1%)、トヨタ(27.7%)、日産(22.8%)、日野(24.1%)、レクサス(22.1%)といずれも極度の不振に陥り、とりわけ利益率の高い高級車や大型自動車の需要が凍りついてしまった。

 

 実は、金融危機が今秋本格化する前から、日本の自動車販売の低迷は始まっていた。「平時」なら月45万台ペースの国内新車市場は、今年初めから40万台を割り込む月が多くなった。ガソリン価格が下落しようが、高速道路料金を引き下げようが、右肩下がりのトレンドは元に戻らない。

 成長の原動力である自動車がコケれば、日本経済全体がコケるのは自明の理。経済産業省の10月鉱工業生産指数(季節調整済)は前月比3.1%減となり、2006年2月以来の落ち込みを記録した。中でも関係者が密かに注目しているのは、自動車を含む輸送機械の生産指数。ピークとなった今年2月の121.3から、10月には107.3まで一気に落ち込んでいるのだ。

 さらに電子部品・デバイスの生産指数も、モス型マイコンの減産を背景に1割以上下落。自動車には大衆車で1台40個ほど、高級車に至っては100個ものマイコンが組み込まれており、自動車と連れ子の減産に追い込まれた。

一言で言うと、かつてない自動車販売不振から始まった今回の日本の不況は、実は金融危機本格化のはるか前に到来していた。不況の元凶は金融ばかりではない。いや、自動車こそが引き金なのだ。