中国時間3月22日、ついにグーグルが中国本土での検索サービスから撤退することを発表した。1月12日に撤退の可能性に言及してから2カ月あまり、1つの私企業としては実に大きな決断である。
予想通り、中国内外のメディア報道は百家争鳴となった。中国の理不尽な検閲要求を拒否してネット上の「言論の自由」を守ろうとしたグーグルを持て囃す論評もあれば、中国で中国の法律を守るのは当然として中国政府を擁護する声も少なくない。
それにしても、今回の事件に「勝者」はいたのだろうか。中国は結果的にグーグルを撤退に追いやり、同社から有形無形の協力を得られなくなった。グーグルも巨大な中国市場を自ら放棄した。双方ともその見返りとして一体何を得たのだろうか。疑問は尽きない。
既存メディアのありきたりの報道に筆者はどこか違和感を感じている。今回は、この興味深いグーグル撤退エピソードを、米中「サイバー冷戦」という全く別の視点から、ちょっと意地悪く眺めてみることにしたい。
中国に喧嘩を売ったグーグル
まずはグーグルの言い分から検証してみよう。3月22日のグーグル公式ブログは概要を次の通り述べている。
(1)中国のWEBに対する攻撃・監視は明らかであり、グーグルは自主検閲をこれ以上続けられないとの結論に達した。
(2)グーグルは3月22日、google.cnでの検索、ニュース、画像などのサービスを停止した。google.cnのユーザーはgoogle.com.hkに誘導され、香港のサーバーを通じて、簡体字による、検閲のない検索サービスを提供する。
(3)中国政府は検閲が議論の余地のない法的義務であると主張したため、グーグルとして検閲を廃止することは困難だった。
(4)中国がグーグルサービスをブロックすることはいつでも可能だが、中国政府がグーグルの決定を尊重することを心から希望する。
(5)中国国内での研究開発・販売活動は継続する。今回の決定は米国の本社が下したものであり、google.cnの中国人従業員には何ら責任はない。