「食の安全」が崩れ去った2011年

放射能被害に食中毒、2012年に残された課題とは

2011.12.02(Fri) 白田 茜
筆者プロフィール&コラム概要

 2011年があと1カ月足らずで終わろうとしている。今年は、これまでにないほど「食の安全」を揺るがす出来事が立て続けに起きた。

 原発事故での放射性物質漏れによる食品汚染の拡大。複数の死者を出した焼き肉チェーン店での集団食中毒をはじめとする食中毒事件。「食の安全」以外では、コーヒー、バター、小麦など主要な食品の相次ぐ値上げ。TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の交渉参加で、今後日本の農業の姿はどう変わるのかも注目されている。

 今年最後となる本記事では、食の話題で今年を振り返り来年を展望してみたい。

内部被曝の長期的な影響は分からない

 食に関する今年一番のトピックは、食品の放射能汚染だろう。「この食品は食べて大丈夫か、水は飲んでいいのか・・・」。原発事故以降、多くの人が市場や食卓に上る食品に対して、健康に影響があるのではないかと不安を感じてきた。

 「暫定規制値」を上回る食品を市場に出回らないようにする規則はある。しかし、飲食などを通じて放射性物質を体内に取り込む「内部被曝」の長期的な影響は分かっていない。性別、年齢、社会経済的な状況や、喫煙といった生活習慣などの要因を排除しきれない上に、現時点では研究の方法論や疫学データに制約があり、科学的根拠を明確に示すことができないからだ。

 そうした中でも子供は、放射線の感受性が高い可能性があるとされ、お母さんたちは不安を抱えている。子供に何を食べさせたらいいのか。放射性物質の内部被曝はどうしたら防げるのか。家族を守るため情報を熱心に集めている人もいる。

 そんな不安につけ入るようかのように、科学的根拠の薄い「トンデモ科学」が氾濫した。「1日2杯の味噌汁が効く」「微生物の一種のEM菌が体内から放射能を排出する」「すりおろしたリンゴが効く」「コメのとぎ汁がいいらしい」・・・。「体から放射能を排出する」と謳う健康食品を販売してひと儲けした男が逮捕されてもいる。

 そもそも、単一の食品を摂取することで病気が改善したり、健康になったりすることはまずないと言ってよい。むしろ、単一の食品を長期間にわたって大量に摂取すれば、栄養が偏り健康に影響してしまう。そのことの方が心配だ。

 暫定規制値を上回る食品は、出荷が制限されている。3週連続で規制値を下回り、出荷制限が解除される例もあったが、今なお出荷制限は続いている食品もある。

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1978年佐賀県生まれ。佐賀県庁で食品のブランド化に関わる。その後、大学院で農業政策や食品安全に関するリスクコミュニケーションを学ぶ。食品コンサルタント会社を経て、現在は社会的関心が高い科学ニュースについて専門家のコメントを収集しジャーナリストに提供する活動をしている。関心のあるテーマは、農業、食品流通、食品安全、リスクコミュニケーション。


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