日本企業の製品の差別化がなかなか上手くいかない。どの企業を見ても同じような製品やサービスばかりで、すぐに価格競争になってしまう。ハーバード大学のマイケル・ポーターには「日本企業には戦略がない」と批判された。

 差別化の重要性は、昔からずっと指摘されている問題である。最近も、ハーバード大学のキム・W・チャンとレネ・モボルニュが、『ブルー・オーシャン戦略』で、競争の激しい市場(レッド・オーシャン)から、新しい競争のない市場(ブルー・オーシャン)を狙うべきであるとその重要性を再確認している。激しすぎる競争から抜け出して、競争が少なく利益率の高い市場を狙うのは、企業にとって重要な課題である。

 また、製品の差別化とは少し異なる論点ではあるが、ベンチャービジネスの必要性もバブル崩壊後ずっと指摘され続けている。

 米国ではカリフォルニアのシリコンバレーやゲノムベイなどに代表されるように、知識集約産業においてベンチャービジネスが大きな役割を担っている。一方、日本におけるベンチャービジネスの役割はまだまだ限定的である。

 労働や資本の流動性を高め、大企業の社内に埋もれている技術や有能な人材を活用し、イノベーションを起こしていくためにもベンチャービジネスの重要性は今後さらに増してくると言われている。

 今回は、ブルー・オーシャン戦略とベンチャービジネスがどのようにイノベーションに影響を与えるのかを、日米の半導体レーザーの技術発展から見てみよう。

 実は、イノベーションを技術のトラジェクトリー(技術的な問題に対して取られた技術的な解決策の軌道)から考えると、ブルー・オーシャン戦略やベンチャービジネスなどが必ずしも望ましい結果を生み出すとは限らない。むしろ、ある種のイノベーションを遅らせてしまう可能性があるのだ。

大企業がこぞって研究開発に着手した半導体レーザー

 半導体レーザーは現在、光ファイバー通信やCD/DVDドライブ装置などの光源、フォトレジストやPOSシステム、レーザープリンターやセンサーなどに広範に使われている。いわゆるIT革命を支えた重要なデバイスの1つである。