韓国の金融監督委員会は2011年11月18日、違法行為があったとして有罪が確定していた米投資会社ローンスターに対し、保有する韓国外換銀行株式の売却命令を出した。重い行政処分だというが、ローンスターはすでに韓国のハナ金融グループに外換銀行を売却する方針で、巨額の売却益を得て韓国を去ることになる。

 ローンスターは2003年に外換銀行を買収したが、配当金や売却益を含めると5兆ウォン(1円=14ウォン)もの利益を稼ぐ可能性が高く、韓国内では「荒稼ぎ」への批判と無力感が漂っている。

ゴタゴタ続きの投資案件、行政処分も痛くもかゆくもない?

 外換銀行は政府系の特殊銀行として設立されたが、その後、一般銀行に転換した名門銀行だ。しかし、IMF危機直後に資金繰りが悪化して独コメルツ銀行からの出資を仰いで乗り切った。2003年にカード子会社の経営難などから再び資金繰りが悪化し、ローンスターが救済に乗り出す形で経営権を取得した。

 2003年から3年間でローンスターは総額2兆1548億ウォンを投資して65%の株式を購入した。この間、外換銀行は経営が劇的に回復していた。

韓国外換銀行の米ローンスターへの売却で違法、検察当局が判断 - 韓国

2006年には韓国検察当局が米ローンスターへの韓国外換銀行売却に関して違法な部分があったとの判断を下した〔AFPBB News

 経営危機に陥った金融機関や企業を買収して経営を再建し、その後に売却する。ローンスターにとっては、お得意の投資戦略だったはずだが、韓国では、ずっとゴタゴタが続いた。

 外換銀行がスピード再建を果たしたことで、「ローンスターへの売却は不当に安値だったのではないか」との批判が起きた。売却を進めた当時の政府高官が「ローンスターと共謀して外換銀行の資産を安く見積もり、不当に安値で売却した」として起訴される事態にまで発展した。

 結局、大法院(最高裁に相当)で無罪が確定したが、幹部官僚が重要決定を避ける風潮が一時広まり、「ローンスターへの売却は経済官僚にとって大きなトラウマになった」(韓国紙デスク)と言われている。

 次いで持ち上がったのは、外換銀行が子会社の外換カードを買収した際、「外換カードが減資する」との虚偽の情報を流して株価を暴落させ、安値での買収に成功したとの疑惑だ。