目標に向かって全力で努力することこそ、生きるということの本質だ。怠けてラクして・・・、なんてのは、世の中の森羅万象の法則とは相反するものなんじゃないかな。すべての生きとし生けるものは過酷な状況を全力で生きているんだからね。

 受験、就職、結婚、出産・・・。人生には大きな転機があるもので、その分岐点を目指して人間は励んで生きている。人は日常生活において様々な判断を繰り返しているものだ。判断とは転機であり、潮目を読むということだ。漁師は潮目を読むことで大漁になったり、坊主になったり、漁の成果が左右される。

 人は、潮目を読み、判断して行動してきたその集積の結果が、今の自分自身なんだね。

五十歩先、百歩先の見える経営者が求められている

 先端技術というのはものすごいスピードで進歩しているもので、コンピューター、カメラ、携帯電話、ハイブリッド車、家庭用燃料電池・・・。以前は「十年一昔」と言ったが、今は3年前が一昔といったサイクルで時間が進んでいる。

 次々と新しいものが生まれ、新製品のサイクルが短くなっている。製品はあっと言う間に新しい技術のものに取って代わられてしまうから、開発費を回収する時間もない。しかし、メーカーは新しい発想で技術も製品も進化させていかなければ、時代の流れに取り残されてしまうことになる。

 その昔、阪急電鉄の創業者、小林一三さんは「世の中で、百歩先の見える者は変人扱いをされる。五十歩先の見える者の多くは犠牲者になる。 ただ一歩先の見える者のみが成功者となるのだ」と言っていた。今の時代は、50歩先、100歩先が見えて、10歩先、20歩先の手が打てる経営者が求められているんじゃないだろうか。

 例えば、ハイブリッドの先は電気自動車だけど、さらにその先は何があるのか。町工場の経営者なら、自分たちの技術をどう進化させて、どう対応していけばいいのか。生き残っていくためには潮目を読んで状況を把握し、柔軟に対応して行動する必要がある。

 「世の中の動き」という潮の流れを読み切れば、需要に乗ることができるかもしれない。当てずっぽうに場当たり的な対応をしていたら、にっちもさっちもいかなくなるものだ。競馬とかギャンブルが当てずっぽうで勝ち続けられないのと同じでね。

少し遠目から物事を見てみる

 先を読んだり、今、抱えている問題の解決策を見つけるには、現場に張り付いてあれこれやっているよりも、少し遠目から物事を見ることが肝心だ。つまり、俯瞰(ふかん)で全体を捉えるんだ。