つい先日閉幕したカナダ・バンクーバーにおける冬季オリンピックの成績不振が、ロシアの政治・社会を揺るがしていると言ったら言い過ぎであろうか。
不振のオリンピックで亀裂が入ったタンデム体制
旧ソ連時代からオリンピックで長らくその強さを遺憾なく発揮してきたロシアだが、今回は獲得した金メダル数でも、また金銀銅合わせた総メダル数でもトップに遠く及ばない結果となった。
特にお家芸のフィギュアスケート・ペアなど、ゲーム前半からロシア勢が振るわなかったことから、オリンピック開催中から各方面で大きな話題となり、内外のメディアでもロシアの不振が取り上げられる始末だった。
ついにはドミトリー・メドベージェフ大統領もウラジーミル・プーチン首相もこれに関連したコメントを出すに至り、ことは単にスポーツの問題にとどまらない国内政治問題と化している。
メドベージェフ大統領は、強面をもって知られるプーチン首相に負けじと、時に強硬姿勢を示すことがこれまでもあったが、今回も両者の微妙な温度差は注目に値した。
首相が問題の客観的かつ慎重な分析が必要だと冷静さを装ったのに対して、大統領は責任者の辞任を促しただけでなく「自らそれができないなら、私が手伝おう」と強硬にそれを迫っており、両者の姿勢はかなり異なっているようである。
多くのロシア・ウォッチャーは、大統領と首相のタンデム体制に本当に亀裂や対立はないのか、どちらが本当に主導権を握っているのかと、躍起になって探ってきたわけだが、今回は両者の違いを探ってみたいと思う。
1. メドベージェフ大統領が望む「近代化」
バンクーバーオリンピック開幕とほぼ時を同じくして、今年2月半ばに著名シンクタンクの現代発展研究所がロシアの近代化に関わる報告書を発表した(『21世紀のロシア:望ましい明日の姿』、英語版はこちら、ロシア語版はこちら)。
この研究所は大統領自身も評議会会長を務めており大統領のシンクタンクと見なされることが多い。当の研究所によれば、今回の報告書も大統領に直接提出されたという。