フランスはやっぱり農業国、という思いをこの時期になると強くする。
というのは、「Salon International de l’Agriculture」(農業国際見本市)というのが毎年この時期に開かれるのだが、その関心度、話題性というのがいつもすごいのである。Salon(見本市)と名のつく催しは年がら年中ひっきりなしに行われるパリであるが、中でもこの農業見本市は恐らく最大級の規模、そして最もメディア性のあるものだろう。
1週間で70万人を集める農業見本市
パリの南にある見本市会場の複数のパビリオンを使って、農業、食物、環境関連のあらゆる展示が行われ、例年、1週間あまりの会期中に70万人の入場者を数える。
47回目の開催となる今年は、2月27日から3月7日までの9日間、2つの週末にかけて行われた。会期中の様子は毎日のようにニュース映像として流れた。
というのも、農業大臣はもちろんのこと、現大統領、前大統領、そして次を狙う政治家たちや各党の党首クラスが連日三々五々訪れては、「展示品」である生きた家畜に触れたり、生産者らと親しく交流するシーンがカメラに収められる。
それはつまり、「私はフランスの大地を愛し、額に汗して働く人の味方です」といった、いかにも国民に親しまれる人物像をビジュアルでアピールする絶好のチャンス。大物政治家としては決して外せない恒例行事ともいえるものなのである。
フランスは国土の半分以上を農地が占める
数字から見ても、この国は確かに農業国。例えば、フランス本土5500万ヘクタールの国土のうち、優に半分以上の3200万ヘクタールが農地。森林が1550ヘクタールで、残りの750ヘクタールが市街地や工業使用、さらに河川や湖という内訳になっている。
また、2008年度のフランスの農業生産額690億ユーロ(1ユーロ=約123円)というのは、欧州連合27カ国中トップの数字で、欧州連合全体の生産額の18%を占める。
さらに、農産物加工品の売上高1630億ユーロ(2008年度・前年比5.5%増)という数字は、フランスのマーケットとしては自動車産業をしのいで最大のもの。こういった現実からも、農業はまぎれもなくこの国の基幹産業である。