およそ1カ月半前にウラジーミル・プ-チン首相が露紙(10月3日付イズヴェスチャ)に寄稿し、「ユーラシア統一経済市場」の重要性を説いた。彼が次期大統領選への出馬表明を行ってから10日足らず後のことであったから、早々と次期政権で予定する政策の発表第1号を放った、と評された。

2012年、ユーラシア統一経済市場が始動

 ロシア、ベラルーシ、それにカザフスタンの3カ国は関税同盟を結成して、域内の商品移動の自由化と共通関税を2011年7月から実施している。2012年1月からはさらに人や企業の移動の自由も認めるユーラシア統一経済市場を発足させる。

優雅な湖面の白鳥、ベラルーシ

ベラルーシの首都ミンスクにある湖から飛び立とうとする白鳥〔AFPBB News

 プーチン論文はこの意義と、その将来への展望を語ったものである。そして、それがEUのこれまでの歴史を学んでなぞっていることもはっきり認めている。

 だが、この論文が記事として出た時期が時期だったから、プーチン帝国がこれからまた6年ないし12年も続くのか、という幻滅とも失望ともつかない気分の中で、西側のメデイアの扱いは無視かあるいは冷めたものだった。

 プーチンはその中で、ユーラシア統一経済市場やその後に来る「ユーラシア同盟」が、ソ連の復活や焼き直しではないとあえて強調している。だが、やはり帝国の支配復活を目論んでいるのではないかという疑念は西側では拭い切れないようだ。

 確かに、似たような国力のドイツとフランスが中心になって始まったEU(当時はEEC)と、経済の規模では一人頭抜けたロシアとその他の国々の組み合わせとなるユーラシア同盟とでは、中身が大きく異なり、結局は後者の代表スポークスマンはモスクワでしかないだろうと予想させる。

EUと根本的に異なるユーラシア統一経済市場

 特に経済政策の失敗からインフレと外貨不足に襲われているベラルーシの場合は、ロシアと組めばその経済独立性に多くの疑問符がついてもおかしくはない。

 そして3カ国ともにEUとは異なり、民主主義という共通基盤を欠いていると西側からは相変わらず見なされている。

 また、既存のCIS(独立国家共同体)という組織とユーラシア同盟との関係は、プーチンがそれぞれ別の仕事があるから排斥し合うものではない、と説明してもどうも釈然としないところもある。

 従って、その先行きがどうなるかはなかなか予想し難いが、プーチンの寄稿論文から読み取れるであろう点を3つほど挙げてみたい。