先週、米国のウォールストリート・ジャーナル紙(WSJ)で中国関係の面白い評論を見つけた。香港在住の2人の米国人ビジネスコンサルタントが書いた「Get Ready, Here China, Inc. Comes(準備はいいか、中国株式会社が来るぞ)」と題する小論だ。
手前味噌で恐縮だが、「やはり言った通りだろう」というほのかな自負と、「ようやく米国人も気がついてくれたか」という冷めた感慨が筆者の頭の中で交錯した。この手の米国人「中国経済通」にはホロ苦い思い出がある。今回はその話をしよう。
中国市場は日本より自由?
筆者が「中国株式会社」について書き始めてから、もう4年になる。外務省退職後、ある国際シンポジウムで面白い米国人に出会ったことがきっかけだった。
実にエネルギッシュなその初老の男、以前は有名な米投資銀行のアジア担当副社長だったそうだ。
10年ほど前は東京にも駐在していたが、今では独立し対中投資一本で手広くやっているという。
「本当に儲かるのか、中国は昔の日本株式会社と同じではないのか、規制が多くて大変だろう」。思わず筆者はその経験豊富な銀行家にこう聞いてみた。
答えは予想外だった。「とんでもない、中国は自由だ、規制が多いのはむしろ日本の方だ」と譲らない。そんなはずはない、こう思って筆者は畳みかけた。「共産党の統制は金融にも及んでいるはずだ、中国に自由な経済市場などあるわけがない」
彼の言い分はこうだ。確かに中国にも規制はたくさんあるが、規制のない分野では米側が提案する新金融商品をどんどん認可してくれる。それに引き換え、日本ではこれまで認可されていない金融商品は絶対認めない。だから東京から撤退したのだそうだ。
対中戦略投資モデル
言われてみればその通りだ。当時の中国は米投資銀行などが駆使する最新金融工学を貪欲に吸収するためか、米系銀行の自由な活動を相当程度認めていたらしい。彼に限らず、米国の金融機関は中国という新開地で大儲けしたに違いない。
「なるほど」と筆者は妙に納得し、その場は黙ってしまった。しかし、一晩寝ると新たな疑問がわいてくる。「中国が自由でぼろ儲けできることは分かったが、儲けはしょせん人民元だろう、ドルに換金できなければ意味ないではないか」翌朝再び彼をつかまえてこう聞いてみた。