アメリカ北東部ペンシルベニア州の地方都市ピッツバーグ。この街を拠点に、若い女性向けの衣料や靴、アクセサリーなど販売するオンラインブティック「ModCloth/モッドクロス」が、不況の中で右肩上がりの成長を続け、大きな注目を集めている。
モッドクロスの2009年の年商は約1500万ドル(約13億円)。2006年の創業以来、「ヴィンテージ感」を切り口に特色ある商品を取り揃え、利用者を増やしてきた。飛躍のきっかけとなったのは、2009年から、ネット上にいる顧客を巻き込んだマーケティングプログラム「Be the Buyer(バイヤーになろう)」をスタートさせたことだ。このコーナーが話題を呼び、米国ビジネス誌「Inc.Magazine」やネット関連の専門媒体に続々取り上げられている。
古着好きが高じて、ミリオンビジネス
モッドクロスのオーナーは、スーザン・クーガーとエリック・クーガーの若いカップルだ。2人は高校時代からの恋人同士で、共に名門のカーネギーメロン大学に進学。
スーザンはもともと古着が大好きで、少しずつ買い集めているうちに、クローゼットに収まりきれないほどのコレクションになってしまった。そこで、ウェブデザインが得意だったエリックが、溢れてしまった古着を販売するためのサイトを2002年に作ってあげたのがそもそもの始まりとなった。
2006年スーザンは大学を卒業するとすぐに、このサイトを本格的なビジネスにすることを計画。それまで1点ものの古着(ヴィンテージ)の商品を販売していたサイトのコンセプトを「ヴィンテージにインスパイアされたもの」と変更し、古着感、レトロ感を感じさせるブランドの「新品の商品」をセレクトして販売することにしたのだ。
モッドクロスは、当初からユニークな販促活動を行う。高い費用をかけてウェブ上に広告のリンクを張り巡らせるのではなく、「パパ&ママストアー」と呼ばれるような、地方の小さな古着屋のウェブサイトを見つけては、リンクの交換を進めていった。
「私たちはいわゆる大手の小売店のように、顧客に向けて『あなたはこれを着るべき』といった趣向で商品を販売する気はないの」とは、スーザンの言葉。
こうした地道なヒット率アップのための販促活動が実を結び、現時点で15万のウェブサイトが何らかの形でモッドクロスとリンクを張っている。その結果、グーグル(英語版)で<Vintage><Clothes><Indie Clothing><Retro Cloth><Vintage Outfits>といった単語を検索すると、トップのヒット率を誇るまでになる。