今回はインドネシアのジャカルタでこの原稿を書いている。日本ではあまり知られていないが、当地にはASEAN(東南アジア諸国連合)の本部が置かれている。久しぶりで再訪したこの赤道直下の大都会は過去10年間に見違えるほどの経済発展を遂げていた。今回のテーマはインドネシア・中国関係である。
南シナ海問題
中国の「真珠の首飾り」戦略の東半分は南シナ海だ。ここは中国が領有権を主張する海域であり、多くのASEAN諸国にとっては頭痛の種でもある。
2015年にも予定される「ASEAN共同体」の設立に向け域内協議を加速すべき今、南シナ海島嶼領有権問題はそのプロセスを遅らせる可能性があるからだ。
言うまでもなく、南シナ海にはいまだ領有権が確定していない南沙、西沙、東沙、中沙各諸島があり、中国、台湾、ベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイがそれぞれ領有権を主張している。
各国の主張を書くだけで1回分の字数を超えてしまうので、今回は詳細な説明を省略させていただく。
今回ジャカルタに来て改めて認識したことがある。インドネシアは現在問題となっている南シナ海島嶼の領有権を主張していないことだ。
確かに、地図を見る限り、インドネシアは南シナ海から遠く南に離れており、少なくとも中国とは領土問題を抱えていない。実に幸運なASEANの国である。
それではインドネシア・中国関係は良好なのかと問われれば、とんでもない。それどころか、中国にとってインドネシアは中国人が理不尽と思うほどの「反中」国家であるらしい。