1月14日、カリブ海のハイチで大地震が起きた。首都ポルトーフランスは壊滅状態となり、死者はすでに確認されただけでも20万人を超えている。
地震の発生直後から各国による救援活動が行われたが、ハイチ国内にある空港の機能が限られているために物資が搬入できず、窮乏に喘ぐ住民たちが食料を奪い合う映像をテレビやインターネットで見た人も多いのではないかと思う。
そうした混乱の中で、両親を亡くして病院に保護された孤児たちが連れ去られているとのニュースが報じられていた。
ユニセフの専門家によれば、1月22日の時点で15人前後の子供が病院から連れ去られて行方不明になっているという。
2004年に起きたスマトラ沖地震の後にも、被災各国でいったん施設に保護された子供たちが行方不明になったことから、ユニセフでは空港に要員を配置して子供の出国監視に着手した。
懸念は当たり、AP通信によると、1月30日に、6カ月から12歳までのハイチ人の子供33人を連れて隣国のドミニカに出国しようとしたとして、10人の米国人が当局によって拘束された。
<米国人たちは、孤児になった子供たちに安全な生活環境を与えようとの善意による行為だと主張しているが、ハイチ政府は違法性は明らかだとして責任を追及するかまえ>だという。
拘束された米国人たちが主張する通りに子供たちが米国の家庭にもらわれていくのだとしても、両親を亡くしてから2週間足らずで、しかも親類の同意も得ずに子供たちを国外に連れ出すというのは、どう考えても異様かつ異常である。
このような非合法な形で連れ出された子供たちについては、誰がどこにもらわれていったのかの記録さえ残らないのだから、善意どころか悪意に基づく行為なのではないかと勘繰られても仕方がない。
国際養子縁組に名を借りて、売春などの性的搾取や強制労働、それに臓器売買を目的とした人身売買が行われていると言われても大抵の人はピンとこないだろう。私自身、本当にそんなことがあるのだろうかと疑う気持ちがないわけではない。
多くのジャーナリストが追いかけながらも、人身売買組織の実態が一向に掴めていないことも疑いに輪をかける。